周年イベントが始まったそうです


「ホップ、こっちこっち」
「迎えサンキュー!駅まで来れたんだな」
「ダンデさんは専用のタクシーあるからね」

逆にタクシーなきゃダメだよ。
迎えなんてハードル高すぎるよ。

「ホップ!」
「へへっ、久しぶりなんだぞ!」

また背が伸びたな、と笑うダンデさんと胸を張るホップ。
日々研究室で課題に勉強に手伝いに…と色々こなす彼は以前よりもずっと大人に見える。
なんかいいわね、成長している姿が実感できるっていうのは。アニキじゃなくても誇らしいよ。

「そろそろ時間だ。散策しながらイベントを満喫しよう」
「やったー」
「あ、ちょっと待ってくれよ…?」
「どうしたのホップ」

何か考え込んでいるホップの様子に、あたしとダンデさんは首を傾げた。
てかその仕草が既に博士っぽい。やるなホップくん。好き。

「…このまま普通に参加すると、迷子にならないか?」

なるな。
画面見ながらあっちにポケモンこっちにポケモンよっしゃゲット!ってやってたら100%迷子になるな。
誰がとは言わないけど。

「そうか?俺は大丈夫だと思うぜ」
「(なぜだし)」
「不安すぎるんだぞ」

ホップもあたしも苦い顔。
その自信はいったいどこから来てるのか。

「あ、手繋げばよくない?ホップとダンデさんが」
「この年でアニキとは…」
「そうだな…」

男子二人に速攻で拒否された。
いやかー。お年頃ですね。

「仕方ないなあ。はい、ダンデさんは左手」
「ん?」
「ホップは右手」
「?」
「あたしが間に入れば問題なし」

こうすれば絶対安全じゃん?
我ながらナイスアイディア。

「三人タイレーツ」
「縦に並んでないぞ」
「ヨコイチレーツ」
「それなら合ってるぜ」
「あたしヘイチョー」

真ん中の特権よ。
早速GO!の指示を出そうとしたあたしは、重大な事実に直面する。

「両手塞がっとる…」

なんてこった。これじゃあ自分のスマホ持てない=遊べないじゃん!
アホすぎる。てか前にもこんなことあったような。

「えっ今更?」
「最初に気付かなかったのか?」
「……」

ガッカリしてる人に追い打ちかけてくんなよ。
呆れた視線がハートに刺さる刺さる。

「ヘイチョーは解散を宣言します」
「そう拗ねるな」
「俺たちが代わりにやるって!ほら行こうぜ!」
「ええー…ヘイによる反乱…」

離そうとした手はより強く握り返され(しかも両方)。
ヘイチョーあたしは下剋上により連行されましたとさ。



「見ろよ、色違いのチリーンだ!」
「かわいい!」

「あっちにヒトカゲがいるぞ!」
「ちょあんま引っ張らないでくださいよ!ホップぅー!」

「あっ、タマゴが孵るぞ」
「何が出るかなー…ヌメラだ!」
「よかったじゃないか」
「よし、このコもヌメた、っと」
「♀にもヌメたってつけてるんだな…」



「ふは〜〜〜楽しかった〜〜〜」

夜、お風呂も済ませたあたしはソファに寝転んだ。
一日中歩き回っていたのでクタクタもクタクタである。

「明日はレイド祭りらしいぞ」
「レイドかあ。伝ポケめっちゃ捕まえよ」
「俺は仕事だから二人で楽しんでくれ」

残念ながらダンデさんは不在だが、バトルタワーもジムになっているらしい。
レアなたまごが出現してから寄ろうと二人で話し合う。

「そろそろ寝るか」
「ん」
「おやすみなさーい」
「待て、どこで寝るつもりだ」
「え?ここですけど…」

MYブランケットを引っ張り出してきたところで声がかかる。
だってベッド広いとはいえ3人キツくない?
一番ミニサイズの人がソファ行きになるかと思ってたんですけどね。

「レディをソファに寝かせるわけにはいかないな」
「泊まりに来たのは俺なんだから、俺がそっちで寝るぞ」
「ゲストをベッドに寝かせないのはちょっと」
「こういう時は大人が譲るぜ」
「サイズ的にソファ厳しくないですか」

で、結局。

「ヨコイチレーツ」
「案外いけるな」
「大丈夫か?」
「へーきへーき」

ゴロンと三人横になってもギリスペースある。
でもホップがもうちょい大きくなったら無理ね。
ん、つまり今しかできないお泊りスタイルってこと?
切ないような嬉しいような。

「こうしてるとキョーダイなったみたい」
「昼間も言われたもんな」

仲良くポゲットをプレイしていた様子は家族のようだ、とあちこちで言われた。
ネットニュースにもなっていたらしい。もうちょっとマシなネタ探せ。

「確かに妹ができたようだ」
「手のかかる妹なんだぞ」
「じゃあ…今日はありがと、おにーちゃん♡」
「「……」」
「反応なし?」

ヘイチョー結構傷つくんですけど。
でも暗闇の中、目を凝らすとホップもダンデさんも照れた表情を浮かべている。
ふむ。本日二度目の解散宣言は見送りましょう。

「おやすみなさい、おにーちゃんズ」
「お、おやすみ」
「フフ。よい夢を、な」

今日の疲れはなんだか心地よい。
ふわふわとした感覚と両隣の高い体温に、あたしはゆっくりと眠りに落ちて行くのだった。


(おにいちゃん、ってなんかくすぐったいぞ…!)
(あたし寧ろお姉ちゃんの方だと思うんだけどなー…)
(おにいちゃんプレイ…!今度してみるか…)



2021.10.09