XXXは知ってるな? 2


「これなの!とってもかわいいよね?」
「……」

ババーン!と盛大に出された『ギブミー♡ユアカジッチュ』のTシャツ。
オレは思わず真顔になった。
大きなハートの中にはウインクした(まつげあるから多分)♀のカジッチュ。
なんで選んだ?なあ、なんでこれ選んだの?

「キバナくん?」
「お…おお…珍しいデザインだな!」

なーんてことを聞けるはずがない。
“ハジメテのショッピング”でキャッキャしてるナナシにそんなことしちゃダメだろキバナ。
率直な意見は隠してイケメンスマイルで対応。これで乗り切れる。

「うん、かわいいね!」
「そ…うだな!」

改めて赤いTシャツを眺めてみる。
ナナシのやつ、カジッチュをあげる/もらう意味を知らないから普通に買っちゃったんだろうな。
ぶっちゃけそれを差し引いてもアレな感じはあるけど。

「あの、それで…キ、キバナくんのも…」
「マジで!?」
「お、男の人向けのデザインもあったから…」

あ〜〜〜モジモジおどおど様子見ながら言っちゃうナナシはクソかわい〜〜〜
でもお前が買ったのってこのデザインなんだよな〜〜〜キバナフクザツ〜〜〜

「えっと…これなの!」
「……。男物はネイビーなんだな!」

それしかコメントしようがねえ。
『ギブユー♡マイカジッチュ』と書かれたTシャツ。まあ予想通りだ。

「カジッチュはドラゴンタイプだし…紺色ってキバナくんのイメージだったから…」

テレテレしながらはにかむナナシに癒やされる。
でもなナナシ、一つ問題発生。

「ナナシ、オレさまの分くれるのはすんげえありがたいんだけどさ」
「うん!」
「多分入んねえわこのサイズ」

明らかにサイズが小さい。
パッツパツ!とかじゃなくて骨格レベルで無理なやつ。

「ええっ!?これが一番大きいって店員さんが…」
「普通のショップだから、オレさまレベルのサイズ無いのかもな」
「そ、そんなあ…」

やばい。ショックを受けたナナシの瞳にじんわりと涙が膜を張っていく。
何がやばいって、この姿はめちゃくちゃキバナのキバナをイライラさせる。
とはいえ流石にこのタイミングでベッドに連れ込めねえ!

「泣くなって。着るのは難しいけど大事に取っておくから」
「ぅぅ……」
「そうだ。お礼にさ、オレさまにも服プレゼントさせてくれよ」

プレゼントにはお返しを。
お返しでなくてもプレゼントを。
ガラルの男たる者、真摯に、紳士に。

「あっ、キ、キバナくんが、私の服っ、買うの!?」
「え…もしかして嫌?」
「い、嫌じゃないよ!嫌じゃない、けど…」

さっそくロトムで探そうとしていた手を止める。
まさかキバナくんのセンスはちょっと…とかじゃないよな?
もしそうならオレさま泣くわ。

「けど?」
「あ、の…男の人が服をプレゼントするのは…」
「のは?」
「そ、その…それを…脱がせたいから、って…♡」
「……」

カジッチュのジンクスも知らないくせに、妙にいやらしいこと知ってんな!
さてはコジローセンパイの本で仕入れたか。
相変わらずムッツリなやつ。またチンコイライラしてきた。

「もしそれが本当だとしたら、オレさまからの服、いらない?」

膝の上に乗せて抱き締め、後ろからわざとゆっくり囁く。
答えなんかわかりきってるけど直接口から聞きたいじゃん?

「い…いらなく、ない…♡」

よし、ベッド連れて行こう。


余談だが。ナナシの買ってきたTシャツはやっぱりティーン用だった。
それを知ったオレは、真摯に、紳士に、その事実を隠しておくこととする。