「これなの!とってもかわいいよね?」
「……」
ババーン!と盛大に出された『ギブミー♡ユアカジッチュ』のTシャツ。
オレは思わず真顔になった。
大きなハートの中にはウインクした(まつげあるから多分)♀のカジッチュ。
なんで選んだ?なあ、なんでこれ選んだの?
「キバナくん?」
「お…おお…珍しいデザインだな!」
なーんてことを聞けるはずがない。
“ハジメテのショッピング”でキャッキャしてるナナシにそんなことしちゃダメだろキバナ。
率直な意見は隠してイケメンスマイルで対応。これで乗り切れる。
「うん、かわいいね!」
「そ…うだな!」
改めて赤いTシャツを眺めてみる。
ナナシのやつ、カジッチュをあげる/もらう意味を知らないから普通に買っちゃったんだろうな。
ぶっちゃけそれを差し引いてもアレな感じはあるけど。
「あの、それで…キ、キバナくんのも…」
「マジで!?」
「お、男の人向けのデザインもあったから…」
あ〜〜〜モジモジおどおど様子見ながら言っちゃうナナシはクソかわい〜〜〜
でもお前が買ったのってこのデザインなんだよな〜〜〜キバナフクザツ〜〜〜
「えっと…これなの!」
「……。男物はネイビーなんだな!」
それしかコメントしようがねえ。
『ギブユー♡マイカジッチュ』と書かれたTシャツ。まあ予想通りだ。
「カジッチュはドラゴンタイプだし…紺色ってキバナくんのイメージだったから…」
テレテレしながらはにかむナナシに癒やされる。
でもなナナシ、一つ問題発生。
「ナナシ、オレさまの分くれるのはすんげえありがたいんだけどさ」
「うん!」
「多分入んねえわこのサイズ」
明らかにサイズが小さい。
パッツパツ!とかじゃなくて骨格レベルで無理なやつ。
「ええっ!?これが一番大きいって店員さんが…」
「普通のショップだから、オレさまレベルのサイズ無いのかもな」
「そ、そんなあ…」
やばい。ショックを受けたナナシの瞳にじんわりと涙が膜を張っていく。
何がやばいって、この姿はめちゃくちゃキバナのキバナをイライラさせる。
とはいえ流石にこのタイミングでベッドに連れ込めねえ!
「泣くなって。着るのは難しいけど大事に取っておくから」
「ぅぅ……」
「そうだ。お礼にさ、オレさまにも服プレゼントさせてくれよ」
プレゼントにはお返しを。
お返しでなくてもプレゼントを。
ガラルの男たる者、真摯に、紳士に。
「あっ、キ、キバナくんが、私の服っ、買うの!?」
「え…もしかして嫌?」
「い、嫌じゃないよ!嫌じゃない、けど…」
さっそくロトムで探そうとしていた手を止める。
まさかキバナくんのセンスはちょっと…とかじゃないよな?
もしそうならオレさま泣くわ。
「けど?」
「あ、の…男の人が服をプレゼントするのは…」
「のは?」
「そ、その…それを…脱がせたいから、って…♡」
「……」
カジッチュのジンクスも知らないくせに、妙にいやらしいこと知ってんな!
さてはコジローセンパイの本で仕入れたか。
相変わらずムッツリなやつ。またチンコイライラしてきた。
「もしそれが本当だとしたら、オレさまからの服、いらない?」
膝の上に乗せて抱き締め、後ろからわざとゆっくり囁く。
答えなんかわかりきってるけど直接口から聞きたいじゃん?
「い…いらなく、ない…♡」
よし、ベッド連れて行こう。
余談だが。ナナシの買ってきたTシャツはやっぱりティーン用だった。
それを知ったオレは、真摯に、紳士に、その事実を隠しておくこととする。