※高校時代捏造
大変だよな、委員長ってのも。
同じクラスのみょうじなまえを見ていると、いつもそう思う。教師からは色々と雑用を押し付けられているみたいだし、何か学校行事があればどんなに面倒なことでも積極的に参加しないといけないし、教室の隅に置いてある花瓶の水を入れ替えだって、そうだ。全部なまえがやっている。
誰に話しかけられても、どんなに下らない世間話でもニコニコとしていて、そのうえ笑顔もアイドル顔負けときた。あーなまえはおれとは違う人種なんだなと、おれとなまえじゃ太陽と生ゴミくらいの差があるんだなと、同じクラスになってから何度思ったことか分からない。いっそおれを焼却処分してほしい。
おれみたいなゴミクズがなまえに同情する権利もないけれど、単に生きてくの大変そうだなとは思う。取り繕ってんだろうなって。そんなに周りから好かれたい? どうせおれ含めて、なまえ以外なんてロクでもないゴミクズばっかりなのに。
皆のノート返却だかなんだか知らないけど、あんなよろよろしながら重そうにいっぱいノート抱えちゃってさ。どーせいつもの雑用とやらなんだろうけど、断ればいいのに、なんでも笑って頷いたりするから。
……ああ、今にもザザーって落としそうだし、どーすんだよ、周りのやつも手伝ってやれよ、クソ、でもおれなんか、なまえと話したこともないし……、それに僕、ゴミクズだし。いや、ゴミクズなのにノートくらい運べなくてどうすんだって話か。
べつに、かわいそうだ、なんて思ったわけじゃないけれど、自然と手がなまえの持っている大量のノートに伸びていた。
「あ、」
「……教室まででいい?」
4分の3ほどごそっとなまえの手から抜き取ってノートを持ち上げると、なまえが驚いたように顔を綻ばせた。……綻ばせた? 僕みたいなゴミクズに手伝われて、てっきり困った顔をするのかと思ったら、よりにもよって「一松くん!」と目尻を下げて笑われてしまって、面食らう。
「…………は?」
驚いた。
てっきりなまえは、おれの名前なんて知らないものだと思っていたから。同じクラスだけど、話したこともないし、勝手に心の中でなまえ、なまえとこっちが気安く呼んでいるだけで、おれみたいなゴミクズは、あれこんなのいたっけ? と指を刺されて笑われるどころか、首を傾げられるのがお似合いだと思ってから。
「ん? あれ、ごめん、違った? でも同じクラスの一松くんだよね?」
「あ……、や、そう、だけど」
「だよね! 話してみたいなぁって思ってたから、こうやって親切にされてすっごく嬉しいなー。ありがとね! 教室まで一緒いこ!」
「う、嬉し……、あ、そう、まあおれゴミクズだから……、これぐらい」
「ごみくず? どーして? こんな面倒な作業手伝ってくれるなんてすっごく優しいのに、そんな言い方よくないよ」
あああああああ隣歩いてると良い匂いすんなあああああまじでよおおお、女の子だからとかそういうレベルじゃねーフェロモンだよフェロモン、なん、なんで、ああもう、やめろ、シコろ。帰ったら絶対シコろ。ごめんなまえ、やっぱおれゴミクズだよ。ごめんなさい。
教室までの道のりの間、なまえはいつも教室の隅から見ていたあのきれいな笑顔を、僕だけに向けてくれていた。話の内容なんて当然耳に入ってくるわけもなく、「ああ、」とか「うん」とか「そうなんだ」だとか、クソつまらない相槌ばかり打ってしまう。充分だ。なまえが、おれみたいなクズの名前と顔を、一致して覚えてくれていた。他の兄弟と、間違えなかった。ゴミクズが太陽であるなまえを意識してしまう理由なんて、それだけでじゅうぶんだった。
女子と一緒に廊下を歩くという一大イベントを終え、早々に帰宅して部屋に一人になったおれは、いよいよなまえがかわいそうに思えた。
こんなゴミクズに思いを寄せられて、なんなら、今からオカズにされる。まあ、でもいいよね。別に本物のなまえに手出ししようってわけじゃないんだから。そもそも無理だし。太陽なんて、眩しすぎて近寄れないし。だから、おれの頭の中で汚すことくらい、許してくれるよね。
なまえに似たAV女優をいつものエロサイトで見つけ出し、手馴れた手つきで再生する。いい時代になったもんだよね。音声はすこし小さめにして、頭の中で、なまえがおれの名前を呼んでくれたときのことを思い出す。一松くん、か。いいね。はは。彼氏とかいんのかな、つかセックスしたことあんのかな、あんな可愛くて18歳で処女とか、ないでしょ。あー、いいね、それはそれでコーフンするし。
そこから先は、いつも通りの手順で済ませ、おれなにしてんだろ、といういつもの賢者タイムに浸る。
浸るが、いつものように、死にたくはならなかった。太陽みたいにきらきらしてるなまえの顔に、いつかぶっかけてみたいっていう、目標が出来たからかなーなんて、考えた。クズかよ。元からか。
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