「ねー、もっと脚開いてくんないとよく見えないんだけどー」
おそ松がわたしにセクハラばかりするのは今に始まったことじゃないけれど、今回ばかりは涙が出そうだ。自分が、情けなさ過ぎて。
顔なんて見なくても分かるくらい、すこぶる楽しそうな声色でわたしに脚を開けと促すものだから、わたしも意地になって俯いて、聞こえないふりをする。そりゃわたしが悪いけれど、こんなわたしを辱めるような真似しなくてもいいじゃん。元はといえばおそ松が悪い、と、悔しくなって、下唇を噛み締めながらソファーの下であぐらを掻きながらわたしを見つめていたおそ松を睨み付けると、「お? 反抗しちゃう感じ?」と口角を釣り上げられた。悪い予感しかしない。
……話は簡単だ。
おそ松の家へ遊びに来て、珍しくおそ松の弟たちが全員出払っていたものだから、これは久々に彼氏であるおそ松とえっちできる、と期待に胸を膨らませながら10分ほどゆっくりしていると、おそ松が急に、「あ! やべ! 借りてたAVの返却期限昨日までだった! やべー! ごめんなまえ、ちょっとゆっくりしてて!」と家を出て行ってしまったのだ。
……AVて。彼女の前で言うか? 別に見ないでなんて重いことは言わないが、最低限そこはふつーの映画とかなんとか、いやもう何も言わなくて良かった。つかわたしほっぽっていくか普通!? 一緒に連れてけよ! DATUYA自転車でも20分かかるって言ってたじゃん! くそくそおそ松のばか!! この間に兄弟帰ってきてえっちできなくても知らないから!! と、悶々とした気持ちでソファーの背凭れに頭を預けていると、見つけてしまったのだ。
チャリに乗るには暑いからとつなぎに着替えたおそ松が部屋の隅に脱ぎ捨てていった、赤いパーカーを。
そこからはまあ、よくあるエロ漫画的な展開まっしぐらだった。
おそ松のいつも吸っている煙草の匂いと、あったかいおそ松の匂いがして、正直たまらなかった。クズで無職でどうしようもないやつだけど、なんか好きなんだよなあ、あの匂い。どうせ20分近く帰ってこないのだから、と、人様の家のソファでごそごそと致していた結果、夢中になって、この有様である。
簡単に言おう。
一人えっちしているところを、見られた。わたしがさあっと青褪めるのに対して、おそ松は一瞬ポカーンとした表情を浮かべたものの、すぐにいつもの悪巧みしている時の表情になり、そこからはもう、あれよあれよと続きをさせられて、今に至る、というわけだ。
「なまえさぁ、オレのパーカーで何してたの? そんなぎゅって握り締めて、匂い嗅いで? 下着降ろして、ハァハァ言いながらなにしてたの〜?」
「だから、もう、あのっ……、わかってる、くせに……、」
「んー? 分かんないなー。お兄ちゃんバカだからさぁ。教えてくんない? なーにしてたの?」
「っ……! おそ松あんたね……。」
脚開けとかいうぐらいだからもう分かってるくせにこいつは! いやもうこういうやつだっていうのは分かってて付き合ってるけどさ! えっちなこととなると意地悪になるところは嫌いじゃないしむしろ好きだけれど、こういう時は本当に勘弁願いたい。恥ずか死ぬ。
「言うまで許してやんねーよ? ま、いい眺めだしオレはいーけどさ、そろそろチョロ松辺り帰ってくるかもなー」
「……うぅ……。」
「言えないならちゃんとオレにわかるように続きして? それともチョロ松に見られながらオナニーしてえの?」
……分かってんじゃん答え!!
もうこれどっちにしろ言っても言わなくても続きさせられるやつだこれ。ここまでしつこくしてくる時のおそ松は、もう折れてはくれない。1年付き合っているのだから、それくらいは理解している。意を決して、ニヤニヤしているおそ松を見ないようにしながら、震える指で、肉芽に手を伸ばす。
人差し指でスッとなぞっただけなのに、「ぁっ、」と声が漏れるほどの快感が身を走る。おかしい。いつもこれぐらいじゃここまで感じないのに……、と、そこまで考えて、答えが出た。
「えー。ちょっと自分で触っただけでそんな声出しちゃうの? えっちだなあ〜なまえは」
「やっ、ん、っ、言わない、で、」
「ほらー気持ち良いんでしょー? もっとしていいよ。いっつもやってる通りに、やってみしてみ」
「ひっ、あっ、ん、」
頭が変になりそう。いやもうなってるか。
彼氏が出掛けたからって彼氏の実家でオナニーする時点でもう変だよ。おそ松のこと、もう絶倫とか性欲モンスターとか言えない。わたしだって、よっぽどだ。
外からの刺激だけじゃ物足りなくなって、おそ松からの言葉責めやら何やらで濡れそぼったそこに、指を入れてみる。やはりというべきかぬるぬるで、もう、指だけじゃ物足りなくも感じてしまう。
「へえ〜? なまえってオナニーはナカもずぽずぽしちゃう派なんだ?」
「あ、ぁっ、これ、すき、なのっ!」
「ふーん……。きもちい?」
「ん、んっ! きもちいっ……、」
「はは。なまえエロすぎでしょ。いっつもなに見てシてんの?」
「なにも見てな、い、」
「えー? でも何も見ずにするってことはないでしょ。……もしかして、オレのこと考えてシてたりとか、すんの?」
「…………っ!!」
図星、というべきか、まあ、そうだ。
おそ松とえっちして自分の家に帰った後も、今日も気持ちよかったなあ、なんて考えてしているし、会えない日ももちろん、おそ松とのセックスを思い出しながらしているし、咄嗟に嘘もつけなくて、押し黙ってしまう。
それを察してか、おそ松は「……へ〜?」と、更に意地悪く笑った。その顔、好き、なんて、もうわたしも余裕がなくて、はやくめちゃくちゃにしてほしいと、そんなことしか考えられない。誰のせいでこんなはしたない女になってしまったんだろう。
「もっとなまえのオナニーも見たかったけど、そんな可愛い反応されたら我慢できないよなぁ」
「あ、んっ、えっち、しよ、はやく、」
「もーどんだけ淫乱よマジでさ。ホント誰のせいでこんな淫乱になっちゃったわけ?」
ね、誰のせい? と、カチャカチャとベルトを外しながらソファーまで詰め寄られて、いつものようにお前のせいだよ! と強気で突っ込む気力もなく、はやく、はやくいれて、とせがむことしか出来ないわたしは、一松くんのことはもう言えないくらい、性癖こじらせてるなあ、なんて考えた。
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