さよならさえ言わずに、いやにあっさりと死ぬものだから、僕はまだきみを殺せずにいる。頭の中で。こんな気持ちは結露に濡れて腐ってしまえばいいのになあ。まあ、今は夏なんだけど。

 じんじんと蝉がうるさい真夏日に、ぼくの彼女の、ちーちゃんは死んだ。
ぼくとデートをする日、待ち合わせ場所へ向かってくる途中の、事故だった。酒気帯び運転していた軽自動車に撥ねられて、あっさりと。即死だった。
ぼくは、いつもの待ち合わせ場所の公園で、今日も遅いなあ、さっき電話で起こしたのに、と過ぎていく時間をただ待っているだけだったので、本当のところは知らないのだけれど、検視さんがそう言っていたのだからそうなんだろう。

 ちーちゃんが死んで、色々なことを考えた。
あの日デートに誘わなければとか、せめてもう少し待ち合わせ時間を早くして、一緒にお昼を食べていればとか、いっそのことちーちゃんと付き合わなければ、ちーちゃんは死ぬこともなかったんじゃないかとか、色々。
自分で自分を責めるたび、ぼくの中でちーちゃんは何度も死んだ。何度も。結局どうしたって、ちーちゃんは死んでいたんだろう。ここ2日間だけでそんな風に思えるようになるほど、ぼくの中でちーちゃんは何度も死んだ。

 でも、起きているときとは正反対で、寝るときは死んだように眠っていたちーちゃんのことだ。ほんとは死んでなんかないに、違いない。
棺の中で、微動だにせず眠るちーちゃんの頬を撫でてみる。周りの人は、そんなぼくを見て、声を殺そうともせず泣いていた。

 ちーちゃんは、死んだ。
その事実だけはどうやったって変わらないことに気付いたのは、ちーちゃんが火葬場で焼かれて、骨になったちーちゃんを見た、先ほどだ。
不思議と涙は出てこなかった。いやぼくだって、泣くつもりはあったのだけれど。きっと泣くだろうと決め込んではいたのだけれど。
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