せんせい
2018/05/24
王路医師と患者
せんせいは、あっけらかんと言い放った。
ほんの2秒ほどの間、眉一つ動かさず、微笑むことも引き攣ることもなく見つめ、すうっと目を細めると音を並べて吐いた。それは承諾の言葉をなしているけども、音のする文字を並べただけの意味の無い唄のようだ。
あまりに簡単で明快な応答に、こちらが二の句を次ぐのに戸惑う。うろ、と視線を彷徨わせ、指先から爪先へ、そのまま俯いて続けた。
「わたしとしたら、犯罪だよ」
情けなく喉が震えて、上擦った声に恥ずかしくなり顔をあげずに上目遣いで見た。子供が調子に乗って、大人をからかって失敗した様子を見て軽蔑するか、あるいは同情するような、慈悲の眼差しで見られることを恐れて、悔しさ紛れに、睨みつけて。
「罪を犯すことは、おそれるべきことなのかな?」
せんせいはこちらを見ずに小さな紙の上でペンを細かく動かし終えると、 差し出した。
「罪がひとの行動を抑するとおもっていたずらするのは、社会契約に馴染み過ぎて平凡だけど、きみの静謐が「守られている」あかしだよ」
トクベツの処方箋だよ。小首をかしげてホホエミを投げられる。
紙には筆記体でなにかが書きつけてありすこしも読めなかった。