2018/06/07

おうじたくみ
いつのまにか時間をかけずに着るようになった着流しで草履を引っ掛け和傘をもって出る。カンカン照りで、道行けばひとの暑いという文句が何度でも耳についた。日除けにかさはささない。
いくつか地下鉄と在来線を乗り継いで、最後にタクシーに乗る。道半ばでごろごろと雷が鳴り出した。
到着する頃には、暗い雲が重く広がり、湿度が高まって草いきれの香りが一層強まっていく。萎れかけの紫陽花と、広がりきった蓮の花、ふくらむその実の脇を抜けて、人気のない墓地をゆっくり進む。熱烈な歓迎は線香をあげたあと、間も無く始まる。ぽつり、ぽたり、と短い前奏の間に傘を広げると、広げ終わるのと同時に溜め込んだものをすべて吐き出すような土砂降りになった。

 
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