獲物は君
2017/12/17
これはゲーム
王路さんは悪戯を楽しむこどものような、含みのある微笑みで残酷に告げた。
「まごころを捧げてはいけないよ。
彼はね、君を真から愛するように振る舞うだろうけど、
それは時限つきの遊戯だからさ。
本気で惚れないことだね」
***
ワタシの勝ちですよ、
目の前で上等なスーツをまとった男が、上品に、しかし嘲るように、微笑む。バーテンダーに短く酒の名前を告げると隣のスツールに浅く腰掛けた。
「灯った火を消す方法はお医者様には無縁でしたか?」
「僕は、患者が深手を負わないよう、精一杯心を込めて、伝えたつもりなんだけどね。」
音もなく置かれたグラスを持ち上げて彼は続けた。
「障害物を巻き込んで燃え上がるので、ずっと大きな炎になりました。」
お力添えに感謝します、とグラスを空にした。その手で流れるように伝票をすくって僕の胸ポケットに差し込んだ。手首からか、一瞬香水がかおる。
「それなら、火消し水が必要になるね。」
ブルーグレーの瞳と一瞬かち合う。肩をすくめてため息をつくとジャケットを翻して彼はゆく。
僕はもう一杯頼んでから、携帯電話を探った。