逆上せ

2018/06/17

だれか
サーキュレーターがまわり、レースカーテンは微かに揺れていた。
汗をかく程ではなかったが頬が火照っている。日曜の昼下がり、夜勤前のひとときに、鼻腔の奥に違和感を覚える。
むず痒いようなこよりでくすぐられるような、微々たる不快感だった。意識しなければ霧散する程度のそれをやり過ごすことができればよかったが、ポタ、パタ、となにかが手元で鳴るのを聞いてそうはいかなくなった。
反射的に口と鼻を覆う、ゆっくり立ち上がり、テーブルの上を確認する。全てほとんど同時におこなったとおもったが、手が遅かったか、流れる血が早かったか、顎下から落ちる血液が点々とガラステーブルを汚した。
空いた手でティッシュケースを掴み、キッチンのシンク前に立つ。開いた手は思ったよりもずっと大量の鮮血に染まっている。
洗い流すと水と曖昧に混ざりながら排水溝に吸い込まれていく。その間も鼻腔から流れ続けるので、唇を舐めると濃く香る。そろそろ出るつもりだったけども、書類はどうしたものかな、汚れた口元を漱ぎながら着替えが必要でなければいいと願った。

 
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