よき友よ

2018/06/17

尾原キュウ
金髪が目の前で揺れていた。もう用がなくなったのか、それとも死体のそばにいるのが嫌になったのか分からない、ただ広間に戻ると告げられたので、パネルに触れ扉を開けた。ふたりが廊下に出ていくのに、ならわずに、境界の内側に立ち尽くして、3秒、閉まっていく扉を眺めた。
閉鎖された後、その場にしゃがみこむ。血で汚れた手で顔を覆うと、乾き始めて鉄錆くさかった。

彼がこんなところにいなくて良かった、という安堵を、苦痛と孤独感と恐怖とが掌とおなじ真っ赤な波となって、塗りつぶしていく。指先と右足の先から力が抜けていた。
藤崎雪乃と名乗った女性は、なるほど、お前の妹で、口数少ない割りに大切だと言うだけある。こんな自分にも親切にする器量があり、こんな状況でもひとりで打開策を見つけようとする胆力がそなわっている。
若々しい女探偵たちが観察していた遺体−探偵のひとりに瓜二つの顔−を眺め、美しい赤で彩られた金と白いワンピースが眩しい。じっと眺め、考えを巡らす。

我々は嘘はつかない

そんな意味の言葉を反芻する、目の前で起こる全てが嘘であればと何度祈ったか知れないのに、それは全て現実だという、死刑宣告と同じだ。

………

赤に染まった体が震えている。己の脚でないほうだけで立っていると言って違いなかった。宙に浮いていて、息苦しい。
これは実験としてもなんの意味もなさないことと己の無能さは自分でわかっている。

「どうしていないんだよ…俺を助けてよ…」
再び膝から崩れ落ち、ベッドに寄りかかる。手繰り寄せたシーツの端も朱で染まっている。

 
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