調理
2018/06/21
おうじたくみ
みじん切りにした玉葱が鍋の中で飴色にかわっていく。すり下ろし人参とひよこ豆がオリーブ油と絡まって跳ね、パプリカの色がまぶしい。湯*きしたトマトとズッキーニの半透明の果肉はみずみずしい粘膜のようだ。まな板に残った切れ端を放り込むと木篦で鍋底を掬った。
レシピの類は卓上に開かれておらず、無差別な順番で詰め込まれた具材をないまぜにする。
王路は調味料の棚を眺め、インスタントコーヒーの蓋を外して数匙落とすと、ターメリック、クチンとレッドチリの瓶が続いて開封され、独特の臭気が嗅がずとも香る。
「食べていくだろう、晩ご飯」
鍋だけを眺めて右往左往する足取りは軽快で、スリッパが床を叩く。彼が鍋を火にかけたまま、冷蔵庫に動くので入れ替わりで覗き込むと臓物がひしめき合うようなグロテスクさを覚える。
「裸エプロンでもしたほうがよかった?」
悪戯を企むティーンエイジャーのように、微笑む顔はそれが軽口なのか本気なのかを隠している。目にツンとくる香辛料を携えて戻った王路はそれをたっぷりとって鍋に投入した。
「でもエプロンがないからさ、ごめんね?」
野菜から出た水分で鍋の中はコトコトと煮立っている。