だいきらいでいて
たくこん
ざらりとした、水分を伴った、柔らかな、肉塊が背骨をなぞった。口付けというには杜撰で、マーキングというには短く、愛撫というには不愉快でしかない。
「あじみ、」
一二三紺は、背中に降り注ぐ、聞いてもいない答えの穏やかに楽しんでいる王路巧を黙って肩越しに睨んだ。唇を舐めてから気に止めることなく、王路は続ける。
「少し汗をかいてるようだね」
「暑いかい」
「紺くんの汗腺が正常に機能してるようでよかったよ」
「少し代謝が悪いみたいだけどね」
王路は鳥肌が立つ皮の凹凸を、骨格にそつてなぞり、検診じみたことを言うが、事態はまったくもって健全ではなかった。
湿気た音が響き渡るのと同時に、一二三には精神的不快感と肉体的苦痛と快感とが沸き立った。履い回る指先が鬱陶しくて、気持ち悪い。
「紺くんが、欲しくないっていうものを、押し付けてられてるけど、どうかな」
いつもなら絶対に濡れないような内腿と腿裏に、したたるほど汗が吹き出していた。
眩暈の前兆のように、目の前が白黒にチラつく。
「やっぱりあついかい?」
「それとも、興奮してるのかな?」
青年は眉間に皺を増やし答えずにいると、王路は重なる身体の面積を増やして、一二三の耳元のピアスに歯を立てる。
「欲しくなっちゃったのかな?」
カチカチ、と喋る度に耳障りに響く音が脳味噌を引っ掻き回し、囁く度に届く吐息と臭う微かな果実の香りに感覚がバグる。不快感と拒絶感の間を縫うように、物理的に解剖学的に、医師としてなのか、的確に、刺激を差し込まれる。
「聞こえますから離れてください」
「ぼくがきみがいやがることをしてるって、きみはわかっているくせに、それを言うのは、どうしてなのかな?」
答えを待たずに、風門をしばらく舐ると見下して微笑む。
「ね、ぼくのこと、大嫌いでいてね?紺くん」
(あんたのことなんか、なんともおもってません)