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2018/07/03

ホモ時空たくこん
はい、といって出されたのはレモネードだった。出来合いのものではなく、わざわざレモンとライムを絞り、トニックウォーターと炭酸水で生成されている。
「甘い方が良かったら、シロップがあるから」
転がされたそれは、コーヒーショップから持ち帰ったのかロゴが入っている。
手術後よろしく手袋を抜きながら、部屋の隅から拾い上げた5センチほどの分厚いフォルダを渡される。
「これが、ナーシャに届けてほしい書類、こっちは律くんね。で、これが紺くんのお望みのモノだよ」
「…」
「ぼくのぬーど」
「…………は?」
そんなもの望むわけないでしょうと応えると、ほんの2秒ほど真顔を保ったあと、すっと品定めするように目を細めるとそのまま笑う。
「冗談だよ」

奥多摩にも拠点を置くこの男と相見えるのは久しい。感覚的には、いちいち癪に触るので、記憶に残りそれほど空いていないようにかんじてしまう。
「がっかりしたかい?」
「写真より、実物のほうがいいってこと、かな?」
黙っていても勝手に、かつ適当に、解釈するからこの男は気に食わない。
反論して黙らせようと息を吸うと柑橘が香った。

 
homo 
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