ポッキー

2018/07/04

はじたく
後ろでベランダの窓が開閉する音がする。
火をつけようと咥えたタバコを横から強奪され代わりに甘いものが口に差し込まれる。口の中に溶けだす人工甘味料が喉元まで広がる。飲み込むことを拒絶したままだが、吐き出すこともかなわない。反対の端を巧が支えていた。
「あげるね」
「ひらん」
唇の手前で手折るとそのまま口へ運んだ。
「たまには煙草じゃないものを咥えるのもいいじゃないか、似合うよ」
サクサクと食べ進める。吐き出すか諦めて食べるか迷ううちに、男は軽やかに唇を寄せる。
────。
「甘くないものがイイかな?」
唇を舐める楽しげな目と視線が絡む。
口の中はまだ苛立たしい甘味と菓子の甘い香りで満ちている。
巧はそのまま袋に指を入れてもう1本口にくわえる。よく食えるものだ。ようやく、唾液で押し流して息をつく。箱を開けると、煙草は最後の1本だった。
「よこせ」
「ほれ?」
唇に挟んだ菓子を器用に上下させてみせる。ちがう、先刻奪われた煙草を抜き取って火をつけた。
「くわえてあげようか?」
悪魔のような悪戯な笑みを浮かべて食べきった袋を握りつぶした。

 
hetero 
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