名前
2018/11/19
こんたく
「こんくん、」
「こーんくん」
「紺くん」
「……」
ずいと、のぞき込まれモニタを遮られる。ぱちりと目が合うと小さく吐息混じりで再び呼ばれる。
「紺くん、」
「……」
たっぷり間を持ってからため息を吐き出して、呼ばれるたびに胸元にとぐろをまく憂鬱を放出した。
「なんですか」
目を細めて満足げに微笑む男は顔を離して小首を傾げる。
「なんでもないよ」
「王路さん」
「ん?」
「…おうじさん」
「うん?」
「王路、さん」
「なんだい、紺くん」
「…別に何もありません」
「そう?」
意趣返しにもならない、王路さんは満足げにデスクを離れていく。
「たくみさん、」
ほとんど唇を開けずに、口の中で、あるいは喉の奥だけで、音を鳴らした。
同時にパタンと扉の閉まる音がする。届かなかったことに、安堵したのか、苛立ったのか、落ち着かない腰を据え直し、再びモニターに視線を移した。