2019/05/05

はじめとたくみ
この部屋にはあかりが少ない。

家主であるはじめくんは、シーリングライトを設置していなかった。かわりに部屋の隅などに、間接照明が置かれている。
マンションの一室であるから、陽が差し込むべき窓がふたつしかない。ふたつもあるとも言えるが、その窓辺には、持ち込んだ観葉植物が陣取っており部屋の代わりに日光を浴びていた。今朝の日射しは柔らかく削ぎ落とされ、窓際に木漏れ日の影を創っている。
垂れ下がる葉を避けて、土に触れてみる。軽く押してみるが、水気が足りないのか、ウッドチップは指先でかさりと音を立てるばかりだった。
軽く指先を払い土をぬぐってから、夜中に出てきた寝室の扉へ向かう。
開けてみると、いっそう暗い寝室だった。勝手知ったる飾り気のないシンプルなベッドで、布団に埋もれながらも垣間見える肩や腕が、まだ夢の中にいることをあらわすように、力なく投げ出されていた。
起こすつもりのない、声量を絞った囁き声てそっと呼ぶが身じろぎひとつしない、静かに眠っている彼は寝息を控えめだ。
「はじめ、あさだよ」

 
homo 
前へ次へ