世界は変わらない

2018/04/15

突き落とされて腕が折れた尾原
三角帯で腕を吊りながら、概ね2週間ぶりの登校日に、浅はかで淡い愚かな気持ちを抱いていた。たぶん、ないけど、と打ち消しながら、でも腕折れたし、少しは何か変わるんじゃないか、なんて。

姉ちゃんは学校やめれば、とあっけらかんという。でも今時高校も出てなきゃ、俺みたいな身体ハンデ抱えたキモブサモヤシ非力男が人間扱いされるワケないでしょ、と一蹴した。
人間扱いは今もされてないじゃん、と姉は詰るような哀れむような声でぽつりといった。

後ろ扉から教室に入った。机の間をぬって歩くと、通り過ぎた場所から順に教室全体に静寂がシーツのように広がる。ほんの二秒だけ、しんと静まりかえる。ざわめきは漣のように、どこからか起こり次第に元の活力に戻っていく。愚かな幻想は想定通りに瓦解した。
自席には一輪挿しの花瓶に、萎れたチューリップがいけてあった。

花粉と花びらが散らばる机の上は、マジックペンで書いてある。罵詈雑言を読まず、鞄を下ろさないまま花瓶に手を伸ばす。
不意に、触れようとしたそれは目の前でかっさらわれ、誰が何をしているのか認識するより早く生ぬるい液体が頭頂部から顎下まで伝い流れていく。

 
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