シロツメクサの動乱 - 春風
驚愕の新事実の発覚と周囲の動揺

視点:宍戸亮


部室に「ピロリン♪」という警戒な音が響く。やっとのことで目を覚まし着ているジャージに手を掛けたジローだったが、その手を止めて鞄からスマホを取り出すなり、飛び上がってワイワイと騒ぎ出した。


「あ!丸井くんからメールだC〜!」
「おいジロー!!ンなもん後でいいから、お前さっさと着替えろよ!また跡部に怒られんぞ!」
「まあまあ、宍戸もそんなに声荒げんでもええんとちゃう?」

ジローを急き立てるが、俺のそんな叫び声も無視して奴はウキウキとスマホを弄り出した。
全くよー、何でほぼ部活を毎日寝ている奴が、他の奴らよりも毎日その帰り支度が遅ぇんだよ!意味分かんねぇだろ!激ダサだぜ!


するとテニスバックを肩に掛けて帰る準備万端の忍足が、苦笑しながら宥めるように言った。その後ろには、他のレギュラー陣が皆同じようにしてジローを待っている。

「勿論ジローも、そのメール読んだらさっさと早う着替えや?」
「うん、分かった〜。なになに…“真田に許嫁がいるらしいんだけど、お前ら何か知らねーか?!”だってさー」
「「……」」


皆が固まる。するとそんな中、跡部が部室の扉をバタンッ!と乱暴に開け放って「おい、オメーら早く出ろよ。いつまで俺様を待たせる気だ」と言った。何が何だか分からねぇけど、今はそれが場違いだということだけは俺にも分かった。
跡部もそれを察したのか、「…一体何があった?」と言ってその首を傾げた。その後ろには、相変わらず体の大きい無表情な樺地が控えている。


「「…はあああああああぁぁぁあ?!」」
「…オイ、何事だ?」
「えっとね〜真田に許嫁がいるって丸井くんからメールが届いたんだ〜」
「……確かにそれは、驚くのも無理はねぇな」
「いやいや跡部!お前はなんでそないに冷静やねん?!」


俺も頭が一瞬麻痺していたが、跡部と忍足のそんな遣り取りで、やっと我に返ることができた。


「…あ、あの真田に許嫁ェ?!んな訳ねーだろ!」
「でも丸井くんからのメールにそう書いてるんだよ〜?それに、相手は青学の生徒らしいC〜」
「くそくそ!あの真田に先越されるなんて……」
「が、岳人。まだ事実か否か分からんことやん、そんなに落ち込まんとき?」
「ったく!立海の奴らも変な冗談言いやがって!激ダサだぜ!」
「い、許嫁だなんて、立海の人たちも度が過ぎますね…!」


確かに、あの真田に許嫁なんて、よくよく考えたら有り得ねぇよな。全く、慌てて損したぜ。
しかし。


「…でも、そんな下らない冗談を、あの人たちがわざわざ俺たちへ言いますかね?何の得もないじゃありませんか」
「「……」」

冷静沈着な日吉の声に、俺も皆も一斉に黙り込んだ。
つーかコイツは何でこんなにも落ち着いてんだよ。俺たちみたいにもっと焦れよ。


「…日吉の言う通りだ。奴らがンなことを、俺らに冗談で言うとは到底思えねぇ」


するとその日吉の意見に、跡部が同意するように頷いた。

え?っつーことは結局、あの真田に本当に許嫁がいるってことだよな…?


「フッ、まさかあの真田に許嫁がいたなんてな…。一体誰だ?なぁ樺地?」
「ウス」
「そりゃもう菩薩みてーな女だろうよ!だって、あの真田の許嫁だぜ?!心が広くなきゃやってられるかよ!」
「菩薩って、それ宍戸さん女性に対する褒め言葉じゃないですよ!聖母とか他に言い方あるじゃないですか!」
「語彙力なくて悪かったな長太郎!」
「何でここでお前らが喧嘩になってんねん、おかしいやん!落ち着き!」

流石氷帝の天才忍足と言うべきか、冷静な制止の声に俺は怒鳴るのを止めた。


「くそくそっ知らずにいられるかっての!」
「知りたくって堪りません!」
「そりゃ俺も、ちょっとは気になるなあ」
「気になって眠れやしねーぜ!」
「zzz…」
「下剋上だ…」
「ウス…」

後半三人はいつものことだから放っておいて、取り敢えず俺たちはその人物を突き止めるということで全会一致したのであった。


「ねぇ〜いつまで話してるの〜?早く帰ろ〜よ〜」
「待たせていたのはお前だろーがよ!それにこれも全部お前がぶっ込んだ話題だろーが!」
「そうだっけ〜?」


ハァ、何だか一気に疲れた気がする。他校生の恋愛事情に巻き込まれて翻弄させられるなんて、俺としたことが激ダサだぜ…。


- 続 -

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春風