メダリスト(鴗鳥慎一郎)
鴗鳥慎一郎の過去の男。
記憶の中でいつまでも輝き続ける美しい男。
明浦路司が周囲を照らす太陽光、光ちゃんが目を惹きつける光なら夢主は見た者を貫く閃光。
焼き付けられた方はたまったもんじゃない。
外見のイメージはyoiの長髪時代のヴィクトル。
夜鷹純、鴗鳥慎一郎世代よりひとつ上。
ウインクひとつで観客席から悲鳴が上がる。
美人薄命だったことが拍車をかけて今でもファンは多い。
故人として設定考えてましたが生存してても美味しいなと思ったり。
慎一郎は毎月誰も連れずに1人で墓参りしてる。
家族は墓地に行ってるらしいことは知っているが、そこに誰が眠っていてどんな関係だったのかは知らない。
妻でもパートナーの席でもなく、初恋の椅子に美しい姿のままでずっと座り続けている。
「幸せになれよ」と言い残して男は去ったが慎一郎の幸福には彼も含まれているため、今ももちろん幸せであるが満ち足りるにはわずかに欠けている。
中世的で美しい容姿に甘く優しい声。
氷の上で蠱惑的に微笑んだかと思えば、コンビニ菓子の当たりを引いて子供のように笑う男だった。
「私がはじめて……?」
「そうだよ。慎一郎が最初で、最後になるかな」
もうあんま余命なさそうだしね〜
死にかけの男相手は嫌だろうにごめんね
でも好きなんだ。
だから証がほしい。
傷つけていいから。忘れていいから。一度だけ。
そうして男は慎一郎の初めてをもらった。
墓参りなんてしなくていいから奥さん子どもと遊園地とか行きなよ。
君は面倒見が良すぎるから無理をしないか心配だな。なにをするにも体が資本なんだから、大事にしてね。
あんまり早くこっちに来ても追い返すから。長生きしなよ。
コンビニに並ぶ菓子を見るだけであの男との思い出が過ぎる。
日常生活のどこにでも面影を感じるのに、もう会えないあの人の幻影が今も胸に焼き付いている。
——
・エキシビション
当時人気で本人もハマってたアニメの主題歌をキャラが着てる軍服モチーフの衣装で滑って界隈をざわつかせたことがある。
公でアニメや漫画の話を全然しない(インタビューされない)のでエキシビションで初めて「あの人あのアニメ好きなん?!」と衝撃を走らせてほしい。
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・生存ルート
アラフィフ。
慎一郎を通して明浦路司と知り合う。
コーチ同士の交流会が終わった後、慎一郎に誘われ後日指定された集合場所に行くと、慎一郎の隣に初老の男がいた。
今でも整った顔立ちだが、若い頃は更に壮絶な美形だったのだろうとぼんやり考える司。
お互いの自己紹介を終えて、男に連れられ向かった先は高級焼肉店だった。
普段の生活ではまず訪れない種類の店の雰囲気に萎縮する司に、男が笑って「好きなの食べて」と勧める。
男の意図が読めず困惑する司。
今更になってどういう集まりなのか聞く慎一郎。
組んだ両手に顎を乗せて薄く微笑む男。
それだけでCMや雑誌の表紙を飾れそうな姿に少し圧倒される司。
「いや、若くて元気な子がいるって聞いたからね。僕も是非お知り合いになりたいなと思って。そうだね……若い子がたくさん食べる姿を見たくてさ」
最近昔みたいに食べれなくなってて…脂っこいものを体が受け付けなくなってきて……。
哀愁漂う雰囲気で「歳だねぇ」と笑う男に肩の力が抜けた。
「だからガツガツ食べてくれそうな子の姿を見て自分の欲求を満たそうかなって。あ、勿論お金は出すよ。君は好きなものを好きなだけ食べてくれればいい」
慎一郎も食べな。ここはデザートもおいしいからね。
男は主に野菜やきのこを注文していた。
司は人の金で食べる焼肉の魅力に負けて、また男たっての希望もありガッツリ食べて非常に満足したが、少し舌が肥えてしまったのか、後日普段の食事に物足りなさを感じた自身に戦慄し、味覚を戻すために激辛カレーを食べた。
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・夜鷹純のファンしてる明浦路司みたいに夢主のファンしてる鴗鳥慎一郎
本人も忘れてそうな昔の演技の構成や成績を覚えてるからあの時って〜と夢主が話を振られると「慎一郎〜。⚪︎年前の大会で俺どんなだったっけ〜?」って聞くし点数から何からつらつらと答えてくれるので周囲はちょっと引く。
「相変わらずよく覚えてるよね。僕は他人の成績なんて事細かに覚えてらんないよ」
「貴方のことですから」
「きゃ〜!この天然タラシ!嬉しいからメルティーキッス箱ごとあげちゃう。でもそういうのは奥さんと子どもにだけ言ってあげな」
「……」
ぱちんとウィンク付きで言われた事もずっと覚えてる。
慎一郎は夢主のジュニアから引退まで大会中のプログラム全部録画してて今でもたまに1人で見てる。
「あそこの回転足りなかったの悔しい」「今日のステップは今までで一番調子よかった」と同じリンクで滑っていた頃の夢主の言葉も反芻している。