かわいいは正義

 昼食を済ませ、温かな日差しに誘われて昼寝でもしようと船を漕いでいた昼下がり。慌てた様子のビーデルから電話がかかってきた事で眠気は吹っ飛んでいった。

 聞けば、悟飯が学会で使う資料を忘れていったらしい。準備や挨拶があるため飛んで戻る時間がなく、ビーデルに連絡を取ったものの、まだ乳児のパンを連れて空を飛ぶことは戸惑われた。悟空とチチは畑に行っているし、ピッコロへの連絡手段はない。まだまだ子供の悟天に任せるわけにもいかないのでオレに連絡を寄越したらしい。代わりに資料を届け行ってもよかったが、一般人がいる場所へ瞬間移動するわけにもいかず、会場付近の土地勘も無いので、ビーデルが帰ってくるまで悟飯達の家でパンの子守りをする事になった。

 身内だとわかっているのか、人見知りしない性格なのか、母親から離れてもぐずることなくにこにこ笑っている。持ち上げたまま回ってみたり、ばあと驚かしてみたり。両脇を支えて自分の頭より高く持ち上げるときゃあきゃあと歓声を上げた。幼少期は怖がりで泣き虫だった父親とは正反対なので、こういうところは母親似なのかもしれない。
まろいほっぺ、ぷくぷくの手足、どこもかしこも丸くて柔らかい。なるほど画家が天使を赤ん坊の姿で描くのも頷ける。かわいいは正義だからね。
お乳は飲ませたからもうすぐお昼寝の時間なんです、と出かける時に言っていたので、布団に寝かせてタオルケットをかけてみるが、眠くないのか蹴飛ばしてしまった。うーん元気。掛け直しても蹴っ飛ばされるので一旦脇に避けておく。季節的には秋だが気温は高いので起きてる間は大丈夫だろう。体力が有り余ってるのかばたばたと手足を動かしているけれど、今はお昼寝タイムらしいのでねんねしましょうね〜。
隣に横になってパンの胸の辺りをゆっくりと叩く。トン、トンと一定のリズムでさするようにすれば次第に静かになっていった。
懐かしい。
 悟空や悟飯達にもこんな時期があったよなあ。寝かしつけたり、ご飯食べさせたり、おしめ替えたり。悟天が生まれた時は悟空がいなかったから、チチと悟飯と3人で子育てしたっけ。……3世代の育児に関わってるのか、歳も取るはずだよな。
とろとろと瞼が下がってきて、もうすぐ夢の世界に旅立ちそうなパンを見て、悟空が赤ん坊の時から歌ってきた子守唄を口ずさむ。この世界にくる前に覚えたもの。健やかにあれ。君の人生が楽しく幸せなものでありますようにと願う歌。

 早めに戻ってこれたビーデルが寝かしつけをする様子をホームビデオに撮っていたなんてパンと仲良く寝落ちしたオレは知る由もなく。子守唄までバッチリ録音されて後の観賞会で公開処刑されるのだった。