悟空とベジータが融合して1人の人間になった。ただし30分の時間制限付き。特撮ヒーローより10倍長い。ラーメンタイマーと同じだったらよかったのにと気配を消して息を殺しながらナマエは内心で悪態をついた。
「オレが勝ったらなんでも1つ言うことを聞け。お前が逃げ切ったら何か望みを聞いてやる」
無神経と高慢。2人の悪いところも融合してしまっているらしい、突然で一方的な言い草で始まった鬼ごっこ。
たらふくご飯が食べたいとか、そんな内容ならわざわざこんなことしなくても用意するのに。そんな軽い気持ちで望みを聞けば、ゴジータはナマエの髪に指を通すように梳き、耳から頬、首筋と形を確かめるように指の背で撫で、微笑んだ。
「こういうことだが、いいのか?」
瞬間、ナマエは全力で逃げた。界王拳も使った。2人の顔の良さが混ざった壮絶な色気を正面から浴びて、赤いオーラに負けないくらい顔は真っ赤になっている。
こういうことって何??そういうこと?!アレをナニするってこと!?でも元は悟空とベジータだし、からかわれてるのか……?いやもし本気だったら絶対逃げ切らないとまずい。たとえ何度も地球を救った戦士でも近親相姦と不倫のレッテルは拭いきれねえじゃねえか!正気になって!!
混乱しながらも後をつけられないよう時折地上に降りて走ったりしながらナマエが飛んだ先は見慣れた山だった。パオズ山なら地の利がある。隠れてやり過ごせば30分くらいなんとかなるだろう。そう考えて、山深い場所に見つけた洞窟の中で時間を潰そうとしたところで、大きな気配が向かってきていることに気付いた。
「まさか……」
洞窟から離れ、近くの茂みに身を潜めるのと同時に、上空から男が降りてくる。パオズ山は悟空にも親しみ深く、ベジータの知性があれば隠れる場所の候補として推理するくらい造作もないことだった。ゴジータの意図など知る術もないナマエは、気を上手く消せてなかっただろうかと的外れな事を考えながら鬼の様子を伺っている。
「外したか……まあいい。次はカメハウスにでも行ってみるか」
そう呟いて地を蹴ったゴジータ。遠ざかっていく気配に張り詰めていた息を吐き出して、ナマエは洞窟へ足を向けた。あの男にとって地球などたいして広くもないだろうが、それでも一度不在を確認した場所にもう一度やってくるほど時間に余裕はないだろう。
できるだけ奥に隠れていようと暗がりへ歩きだした時、背後から肩を掴まれた。
「みぃつけた」
2人の人物が同時に話しているような、特有の声が耳元で囁く。鳥肌が立った。振り返らずとも相手が誰かなんてわかりきっていた。