禁城内に予約制の露天風呂が出来たので夫婦で入りにきたのだが、なんとそれは温泉で、産まれて初めて温泉に入る深怜はお肌に良さそうだと喜んだ。


「凄いですね、まさか禁城に温泉が沸いてるなんて知りませんでした。」

「兄王様が自分が温泉に入りたいからという理由で(金属器で)山造って温泉沸き起こしたんですよね。」

「山を造っ...?え?そんな事が出来るのですか...?」

「?、普通に出来ますけど。」

「普通に!?」


義兄は山を自ら造ることが出来るのか...やはり凄いお人だ、と深怜は紅炎への畏怖の念をより一層強めた。
となりを見ると紅明が顎のあたりまで湯につかり、うっとりと目を細めている。そろそろまずいなと思ったと同時に、炬燵を出した時になかなか炬燵から出てこないでぐうたらしていた姿を思い出した。


「このまま出たくないですね。朝までここで過ごして、そうだ、軍議もここで行えばいい。ちょっと忠雲を呼んで下さい。」

「何仰ってるんですか。朝まで居たら逆上せて大変な事になりますよ。そろそろ出ましょう。」

「いや無理ですね。私はまだここに居ますからあなただけ先に出てください。」

「そんな事したら本当に朝までここにいるおつもりでしょ。だめです。ほら出ますよ。」


深怜は先に湯船から出ると紅明の腕を取って引っ張った。ちなみにタオルを身体に巻き付けているので湯船から出た所でべつに恥ずかしくはない。


「いーやーでーすーーーーーーーーーー。」

「ちょっともう何子供みたいな事言ってるんですか。」

「ア゛ッ!痛っ!!肩外れた!明日の軍議無理ですから!!」

「もう!何なんですか!」


腕を離すと紅明は湯の中で両腕両足を広げ再び顎まで沈んでいってしまった。駄目だこの人......。普段は冷静で少しピリッとしていてそういう所が素敵なのに、本質的にはこっちが主なんだよなあ、と。深怜は諦めかけたがぎりぎりのところで思い直した。諦めてこのまま置いていった方が楽は楽なのだが、生活力0のこの人を本当に置いていったら逆上せて気絶してそのまま召されてしまう。紅明様、と呼びかけもう一度説得にあたろうと彼を見ると少し遅かった。


「紅明様!?ああもうだから言ったじゃないですか!」


紅明は逆上せ、ぐったりとしていた。生活力皆無、金属器が無ければ戦闘力も無い、マギ界スポーツテストでも散々な結果というレッテルを持つ人はお風呂の始末すら自分で出来ないのか......。深怜はため息を吐きつつ、紅明の腕を取り自らの肩に掛けた。気絶しかけた成人男性を抱えあげるなど以前の深怜ならとてもじゃないが無理のはずだったが、もう慣れてしまった...。よいしょと抱えあげ紅明を湯から引き上げるとそのままずるずると引きずって退出したのだった。





おかしい。ちょっとイチャつかせたかったのになぜかこんな話になってしまいました。
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