お仕事の帰り、私たちは待ち合わせをして街のイルミネーションを見ることにした。
「お仕事お疲れ様」
「ありがとうございます。寒くないっすか?」
「ちょっとだけ」
鼻先が少しだけ赤くなっているのが自分でもわかるが、彼が「赤いっすよ」と指先でちょんっと触れるだけで温まる気がした。
街中はキラキラと輝いていてすっかりクリスマス仕様だ。薄暗いこともあって徐々にライトアップされていく光景は冬の醍醐味とも言える。
人混みを抜けるとクリスマスツリーが見えた。見上げると首が痛くなりそうなほど大きいツリーは、街全体に彩りを与えていた。周りにいる人たちもツリーを目の当たりにしてどこか浮き足立っていたように見えた。
「わぁ、ジュンくん見て!」
「あぁ、すげぇっすね」
他の人につられてか、高揚感に駆られた私はツリーへと駆け寄った。
「あ、ちょっと。転びますよぉ」
地面は寒さのせいか少し凍結していて、思わず転びそうになる。彼がすぐに私の腕を引っ張ってくれて「だから言ったでしょう」と呆れながらも腕を組むように促してくれた。
「見てジュンくん。大きいよ!」
「見てますってば、はしゃぎすぎじゃないっすか〜?」
大きいツリーの先端にある星が大きく光っていて感動する。そんな立派なツリーは無数のライトでキラキラと輝いていた。これがはしゃがずにはいられない。こんなに素敵なツリーを彼と見ているんだから。
「写真撮ろう!」
腕を離して提案すると目を細めて嬉しそうに微笑んでいた。
「はいはい、撮りますよぉ」
「……え? ジュンくんは写らないの?」
「オレは良いっすよ、ナマエさんが楽しそうにしてる姿を撮るだけで」
すぐさまカメラを構える彼に一緒に写るよう促しても消極的だった。彼が一緒に映らないのなら意味がない。
「ジュンくんも写ってほしい」
「……わかりました。一回だけっすよ」
彼が私の方に近づき、ツリー側に背を向けると私の肩を寄せて「そこじゃ入りませんよ」と言いながら密着してくる。なんとかフレームに収まる位置に来たかと思えば、右を見るだけで彼の顔が近かった。
彼が瞬きするたびに揺れる長いまつ毛が、話すたびに震える唇が、近くで見えた。見慣れているはずなのに、周囲のライトのせいか、より一層綺麗だった。
「ん? どうしたんすか」
私の視線に気づいた彼は優しい表情でこちらを向いた。その瞬間はゆっくりと時が流れている気がした。周囲の声も音もぼやけて聞こえるほど、彼の声だけが鮮明に聞こえていた。二人だけ同じ時を刻んでいるようだ。
夢のような感覚に陥っていると、突然彼とパチリと目が合ってしまい視線を逸らした。「可愛いっすね」と意地悪な声で言ってくる。お互い近い距離だったため鼻先がぶつかるほどの近くまで来ていたらしい。
恥ずかしい私は「良いから早く撮ろうよ」とそっぽを向いて誤魔化す。そんな時クスクスと笑う彼はシャッターを突然切った。
「撮る時はちゃんと言ってよ〜」
と怒っても「可愛いっすよ」と言いながら、写真を見て抑えきれない笑いを溢す彼の表情に心臓が跳ねる。こんなに無邪気に笑う彼の前では誰も逆らえないだろう。彼の明るい笑顔を目の前で見たことで、先程まで冷えていた指先も熱を帯びていた。