これが先触れ、前兆し

突き抜けんばかりの澄んだ青霄は果てしなく広がっている。玲瓏とした空気と天空にぼんやりとシルエットを描きながら地を焼くような熱を出す日輪の対比が、零魔の心になんとも言えない気持ちを残す。

ブンッ、と空気を裂く摩擦音が耳に蝟集する。青空から目線を外す。音の出どころは見ずとも分かっていた。疲れないのかな……、と零魔は思いながら音の出どころに一瞥をくれる。いつも通り刀剣を振りながら全身の筋肉に意識を向ける様子は、側から見ていても肌を指すが如き気迫を有していた。縁側に座りながら長い月日を共にした幼馴染の『 修行 』を見つめるのが、彼女の日課になりつつあった。


「兄ちゃん、姉ちゃん、見つけた!」

――ぼんやりと、すっぽりともやに包まれていた脳みそが冴える。明朗快活さを孕む声は伊織と零魔の義妹――小笠原カヤ――のものであった。

「……カヤか」
「カヤ、おはよう」
「やっほー、兄ちゃん! 姉ちゃん!」

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