悪魔はここにいる
※ネビロス→てっしー
俺には憎き敵のあのクソ(左門)とは別にもう一人敵と呼べるべき人物がいる。普通の人間であり特殊な能力こそないが、あの左門と同様に他人に嫌な顔をさせるのが趣味の様な奴だ。左門が二人、とまではいかないがこの二人は俺の見えない所で繋がっているのだからタチが悪い。
「ネビロス少将閣下ぁ!」
それが目の前にいるこいつ、みょうじなまえだ。
「聞きましたよ、受肉してたそうですね!何で教えてくれなかったんですか!?」
なぜそれを知っているのか疑問に思うも、直ぐに左門の嫌らしい顔が浮かぶ。なまえの含みのある笑顔を見る限り十中八九、奴がこの話を漏らしたのだろう。クソ、面倒なのに捕まってしまった。左門とはまた別の嫌がらせを仕掛けてくるこいつの対応は本当に苦手だ。
「…なぜ貴様に教えなければならない」
「やだなあ、私と閣下の仲じゃないですか」
「教えなくてもなんら問題のない仲だったよな!」
「何言ってるんですか?受肉して肉体は人間ってことはもう準備OKって事ですよね!」
おまえが何を言ってるんだ。そして嫌な予感しかしないが一体何がOKだと言うのか。
「…聞きたくはないが一応聞かせてくれ、俺が受肉してたら何がOKだって?」
「私と結婚してくれる為に受肉したって聞きましたよ」
「全く違う!」
「ふむ、わかりました。では肉体的なお付き合いからで良いのでお願いいたします」
「おっ、お願いいたしますではない!」
あのクソ(左門)がけしかけたに違いない!このバカとあのクソがほくそ笑みながら、俺をからかう計画を立てている様子が容易に想像できる。こういったネタは…その…部下を召喚されるよりタチが悪い。左門の様に悪意全開で攻撃された方が、俺も力ずくで撃退できるのだがこれも計算の内なのか。
「えー、でも肉体的に人間って事は…」
「わああっ!こら!」
これ以上不用意な事を言わせてたまるか!まったく本当にこいつがあの天使ヶ原桜と同じ、人間である事が信じられん。私が何を言うと思ったんですか?なんて今にも吹き出しそうな顔で言うなまえは本当は悪魔なのではないだろうか。
「あーおかし、冗談です。そんなに睨まないでくださいよ。」
魔界の者も皆震え上がるこのネビロスの睨みも、こいつには全く通じない…正直な話、自信喪失しそうなんだが。なぜこの俺がこんな人間の小娘に振り回されなければならないんだ。
「今日は実は閣下に相談があって来たんですよ」
「…相談だと?」
「左門くんの事なんですけど、」
話を聞くと、何やらこいつも小さいながらも日々左門に恨みがあり、仕返しの為に俺の力を借りにきたらしい。しかし笑いすぎの涙を拭っている姿を見ると不信感しか湧いてこないな。
「いつも左門とつるんでいる貴様が?…信用しかねるな」
「私は左門くんと違って普通の人間なんですよ?やられる事はあっても、やり返す事は出来ないんです」
「う、うむ…」
「いわば私も左門召介被害者の会側の人間で、あの天使ヶ原さんと同じ立場という訳です!」
「!」
握った拳を震わせ熱弁をふるうなまえに、思わず気づかされる。そ、そうか…なまえも左門と共闘している様に見えて、裏ではやはりあの悪魔の被害にあっていたのだな!こいつもあの天使と同じ…ただのか弱い少女だったという訳か。被害者の会会長が助けを求める者に手を差し伸べなくてどうする!
「…よし!わかった、手を貸そう!」
「ネビロス少将閣下…!」
俺は差し出された手を取り熱い握手を交わす。
む、こいつの手はこんなに小さかったか?当たり前だが身体も俺より一回り以上小さい。左門と一緒にいる事で忘れがちだが、普通の少女なんだな。…黙っていればだが。
「さて閣下。私魔力もなにも持ってないので、取り敢えず契約の証明としてこの用紙にサインしていだだきたいのですが」
「ああ、わかった」
俺が言うのもなんだが、悪魔との口約束ほどあてにならない物もないだろう。差し出された用紙を受け取る。えーと、名前……住所…………本、籍?
「あっぶねえええ!」
ビリビリビリッ
これ婚姻届じゃねえか!本当に油断も隙もない奴だな!信じた俺が馬鹿だった、こいつはやはり左門と同じ部類の人間…いや悪魔だ。思わずビリビリに破り捨ててしまったそれをなまえにつき返す。
「っち、やはり裏があったか!」
「舌打ちをしたいのは私の方ですよ、閣下」
「いや、俺の方だ!」
こいつのこの悪魔じみた笑顔、全く舌打ちなんてしそうにない程楽しそうなんだが…。いや、むしろ舌舐めずりでもしそうな悪魔そのものだ。あの天使と同じだなんて一瞬でも思った自分を殴りたい。
「あはは!全部本気なんですけどね」
「…ぐ」
「契約書持ってまたきます」
「こっ、来なくていい!」
きっと戻ったら左門とこの話を楽しむのだろう。…あっ、涙でてきた。
(2015.11.14)