6月中旬


結局、次の休み時間に純と話すことはなかった。なんとなく、純に会いづらくなってしまった。純とはいつも一緒だったから、私の知らない純の存在についていけなくなってしまったみたいだ。



















「えーじゅん!」

少し落ち込んだ気持ちを紛らわせるため、1年生の教室まできた。栄純に会ったら嫌でも元気になれそうな気がした。栄純の教室を目指して歩いていると、丁度教室から出てきたので声をかけた。

「あ!ゆり先輩!どうかしやしたか、こんな所で!」
「んーとね、えーじゅんに会いに来た!」
「え、ちょ、先輩!もー心臓に悪いジョーダンはやめてほしいっすよー!思わずドキッとしちゃったじゃないすかー!」
「ジョーダンじゃないもーん!」

声をかければ子犬のように走り寄ってくる栄純。思わず本音をこぼすと、顔を真っ赤にさせて照れながら笑っていた。思った以上に素直な反応につられて私も笑ってしまう。

「先輩なんで笑うんすかー!酷いっすよー!!」
「アハハッ!ふふ…っ、いやー栄純は相変わらず面白いなーと思って!…おかげで元気でた。」
「いやいや完全にゆり先輩のせいっすから!!てか、先輩元気なかったんすか?」
「ちょっと、ね。でも本当栄純のおかげで元気でたから!やっぱ栄純に会いに来て正解だったわ!」
「…まあ、先輩が元気になったなら何も聞かないっすけど、辛かったら俺でよければ相談のるんで!!いつでも頼ってほしいっす!ぜひ!!」

思いもよらない言葉に、一瞬頭がついていかなかった。ただの可愛い後輩だと思っていた栄純。良い子だとは知っていたが、まさかここまで優しいとは…。落ち込んでいたと言えど思わず頼りたくなってしまう。

「栄純は良い子だね。」

私より背の高い栄純の頭を背伸びして撫でる。やっぱり少しツンツンしていて、男の子の髪の毛。何がなんだか分からない、という顔をしつつも大人しく私に撫でられる。そして照れくさそうに微笑みながら「先輩のためですから。」と言ってくれた。








(これは誰だってノックアウト。)
(後輩だと思って油断した。)