7月中旬


長袖のワイシャツで過ごすには大分暑くなってきた7月半ば、野球部にとって長く短い夏が始まっていた。

「…静かだなあ…。」

甲子園の予選が始まったため、平日にも試合がある。そうなると、必然的に授業も公欠する事が増える。いつも騒ぎの中心にいる野球部のいない教室は、思ったよりも静かに感じた。

「野球部、今頃どうなってるかなー。」

騒ぐやつらがいないから授業も退屈。先生の話す声を聞きつつ、窓から外を眺めた。太陽がギラギラと照りつける。こんな暑い中試合なんてしたら、熱中症でぶっ倒れるわ。

「はぁ…。」

毎年、この時期は嫌になる。去年も、一昨年も。甲子園という目標に向かって全国の高校球児が切磋琢磨し、勝ち負けを競い、涙を流す。純も例外ではない。私は、そんな純を見るのがとても辛かった。人より何倍も努力して、自分がレギュラーとして残る道を選択し、必死に前に向かう純を知っているから尚更辛いと感じた。勝ち負けはとても残酷だと思った。





「では、今日の授業はこれでおしまい。もうすぐ夏休みだからって気を抜くなよ。」

先生の声にハッとして時計を見る。12時25分、授業が終わる時間。みんなはお昼だー!と騒ぎ始めている。購買へ行こうとか一緒に食べようとか、そんな声が聞こえる中、私は迷わず外に出た。目指すは、野球部のグラウンド。











「あっつ…。」

ジリジリと照りつける太陽に、思わず目を細める。純は、この暑い中仲間と共に闘っている。ふと、私もこの暑さの中で外にいれば、少しは純の仲間になれるのかな…と、よく分からない事を考える。きっと、この暑さのせいだ。

「純、がんばれ…!」

野球場で頑張っている純にエールを送る。それが今の私にできる唯一の事。



















(どうか純が1日でも長く野球を続けられますように。)
(どうか純が悔いなく野球をプレーできますように。)