5月上旬


「なあ、御幸。」
「…なんだ?」
「この間よォ、佐原が練習見にきてたんだよ。そんでさ、俺声かけたんだわ。そしたら野球部に幼馴染が居るらしいんだわ。お前知ってっか?」
「は?!いや、知らねーけど。なんだよ、ゆりちゃん野球部に知り合いいんのかよ。」
「やっぱ知らねーよなー。誰なんだろ。」

朝練が終わり、授業に出るため制服に着替える。たまたま早く着替え終わっていた俺は御幸の部屋へ行き、昨日起きた事を話した。やっぱり御幸も知らないらしい。

「つーかさあ、ゆりちゃんって野球に全く興味なさそうじゃん。」
「そこなんだよなあ。でもいたんだよ昨日。…おっし、今日聞いてみっか!」
「ついでにそのネタでからかってやろーぜ!」
「相変わらず性格悪いのな、お前。…俺もそのつもりだけどな!ヒャハッ!」

そうと決まれば急いで支度をする。早く問いただしてネタにしてやりてぇ!

「おし!倉持、行くぞ!」
「いやお前を待ってたんだよ!」





























「佐原ー!」
「…ゲッ。」
「おめー今あからさまに嫌な顔したな!」

いつも通りに登校する。結局昨日は純に相談するのを忘れ今日が来てしまった。しかも、御幸までニヤニヤしている。倉持、喋ったな…。

「おはよーゆりちゃーん!倉持に聞いたぜー?野球部に幼馴染が居るらしいじゃん。ぶっちゃけ誰なんだよー?」
「おうおう!いい加減吐いちまえって!そしたら楽になるぜー!」

もうどこかの悪役ばりのセリフである。しかも完全に悪い顔をしている。こいつら本当に性格悪い!!

「いや、倉持君。私昨日言ったよね?教えられないって。」
「またまたー!んなこと言ったってダメだぜ?ちゃーんと吐いてもらうからな!吐くまでは問いただすことをやめない!」
「そーだそー「御幸は黙って。」」
「すみません。」
「それに、仮に私が教えたところであんた達は損すると思うよ?」
「損?そりゃまた何で?」
「それは、なんて言うか…多分なんだけど…。」
「多分?」
「本人が望んでないから、倉持と御幸が知ってるってなったら相当怒る、と思う。」

これは本当。あとは、野球部が面白がって私に近づくのを避けるため。野球部は女子に人気の高い部活。そんな状況で野球部が私と仲良くしたら結末は容易に想像できる。まあ、御幸と倉持のせいで既に被害を受けつつあるけど。

「怒る…?俺らを怒れるってなる、と……3年生か!」
「だな!だとすると、哲さんとか?増子さんはありえないし…。丹波さんあたりもこういうの隠しそうだよな。」
「おー!冴えてるじゃねえか御幸!で、誰なんだよ?3年生って事はもうばれちまったんだ!さっさと言えよ!ヒャハッ!」
「いやいやあんたら完全に楽しんでるでしょ?!目キラキラさせるな!!」


キーンコーンカーンコーン…


「予鈴!!!」
「チッ、なんだよ。お前が言わねーから予鈴鳴っちまったじゃねーかよ!」
「舌打ちするなし!てか早く席付きなよ!ほらしっしっ!」
「ゆりちゃん、また昼休みにな?」
「ぜーったい言わないから!!!」




(こいつらがレギュラーじゃなければ蹴ってた!!!)