眠るきみに秘密の愛を
あれ、俺らの教室まだ電気ついてる。誰か消し忘れたのか?しゃーねー、消しに行くか。
時刻は午後7時。部活の区切りもつき、俺は教室の電気を消すべく校舎に入った。階段を登り教室を目指す。自分の教室につき扉を開けようとすると、扉のガラスから人影を発見した。
「…佐原…。」
佐原ゆりとは中学から学校が一緒だった。野球一本な俺に気さくに話しかけてくれる数少ない友人。それはきっと彼女もそう。俺を友人だと、そう思っている。高校生になってもなお、俺は佐原の友人というポジションを維持している。
「こんな時間までなにやってんだ、こいつは。」
下校時刻はとっくに過ぎている。しかもこいつは帰宅部。こんな時間まで学校に残る理由なんてない。
俺は教室の扉を静かに開け物音を立てないように佐原に近寄り、隣の席へ腰掛けた。
「俺さ、いつまでお前の友人でいればいいの。」
ふと口をついた言葉。中学を卒業する時に気づかされた。いつまで…いつまで、お前への気持ちを殺せばいいのか。
「……今日まで?」
「……は?」
「え、だから今日までにすれば?」
「…いや、そういうことじゃねえよ。何、お前起きてたの?」
「寝てるなんて一言も言ってない。」
「はいはいそーですね。てか、酷いこと言うなよ。これからも友達だろ?俺ら。」
「…別に、私はいいけど。いい加減逃げるのやめれば?」
「は?逃げてる?」
「そーでしょ。友達ってポジションを抜け出す勇気がなくて逃げてる。」
「…はっはっはー!面白い事言うねえ!」
「そりゃどーも。」
勇気がない?俺が?はっ。そもそも俺は野球辞める時まで色恋沙汰はごめんだ。そう思ってた。でも、こいつに出会ってそれは変わった。こいつのそばに居たいから、野球に集中した。
「なあ、お前さ、ちょっと寝てくんね?」
「…言ってる意味が分からないんだけど。」
「だから、さっきみたいに狸寝入りしろって言ってんの。」
「は?なんで私が?」
「いーから!ほら!」
「ったく、めんどくさいやつ!」
嫌な顔をしつつもさっきと同じ寝ている体勢をとってくれる。俺に勇気なんてもんがあれば良いんだろうが、生憎勝てない勝負はしない主義なんだ。だから、佐原の言うことをする勇気は俺にはない。…でも、それでも俺は、お前を諦めることはしたくない。
椅子から立ち上がり、佐原の耳元で囁く。
眠ったふりでも良い
(好きだ。)