ロン・ウィーズリーは、入学してから度々彼女に驚かされた。
最初は一度目に会った時。
学校に来る汽車の中で仲良くなったハリーに向かって、まるで小さな子に呼びかけるみたいに「坊や」と言ったのだ。それも満面の笑みで。あのハリー・ポッターに!
次は二度目に見たとき。ダンブルドアと呼ばれて組分け帽子を被った。
ダンブルドアといえば自分にとってはあまりに有名も有名。
お話の中でしか聞いたことない偉大な魔法使いだったのだ。
その名前の偉大さは、魔法界の者であれば誰もが驚くであろう。
次は三度目に会った時、妖精の魔法の授業で、挨拶をしたらまるきり無視された。
あげく誰だっけと来たもんだ。
自慢じゃないが揃って赤毛の自分の家は、目立つし何しろ数が多いのとで、よく覚えられこそすれ忘れられた試しはなかった(もうちょっと忘れてもらったっていいくらいに)
そんな自分に向かって、すまなそうに笑う彼女は少し可愛くて、名前を覚えると言われたら教えていた。
次はいつだったか廊下を歩いてたら、彼女がやはり廊下の端に一人しゃがみこんでいた。
何をしてるのかとよく見れば、驚いたことに彼女の足下にはミセス・ノリスがいるではないか!
ホグワーツの管理人であるフィルチの飼い猫で、主人によく似て性格が悪い。絶対悪い。
ミセス・ノリスはフィルチの忠実な手先で、奴の前で罰則をすれば、あっという間にどういう連携なのかフィルチがすっ飛んでやって来る。生徒にとってはフィルチとピーブズの次に厄介な奴のはずだった。
そんなミセス・ノリスを足下に、彼女は何やら呟いて話しかけているようであった。
(・・・ていうか?話してる?)
にゃーうとミセス・ノリスが鳴いて、彼女が何やら言うことに相槌を打つかのように首を振るのだ。
声をかけようとしたつもりはないのだが、踏み出した一歩がミセス・ノリスの境界線の中だったらしい。
パッとこちらを見られ、次いで彼女がこちらを振り向いた。
「・・・ロン」
「・・・(今少し思い出すまでに間があったな)」
彼女が立ち上がる時にはミセス・ノリスは尻尾を翻して立ち去っていた。
「えっと、何してたの」
「・・・しゃがんでいた」
「それは見ればわかるよ!」
「わかってるじゃないか。聞かなくても」
少しも悪びれずに、アーモンド型の目をくりくりさせて言うものだから、力が抜けてしまった。
「なるべく君には驚かないようにするよ」
「驚かせているつもりはない」
首を傾げた彼女の前髪がさらりと揺れた。
艶やかな黒髪の中で、前髪の真ん中だけが、染め抜いたように白かった。
「(かわいいな・・・)」
ロンは隣だって歩き出すルルを見ながら、溜め息をついた。
「なぁ、ところでハリーは一緒じゃないのか?」
「言うと思ったよ」
予想が当たって、ロンはまた溜め息が出た。
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