ルルは、目に見えてしょぼくれていた。


「授業はどうじゃね?ルル」
「…それなりに楽しい」

ダンブルドアが入れてくれた紅茶に息を吹きかけて冷ましながら、ルルは微笑んだ。
それからおそるおそる口先をつけて、ひゃっと引っ込める。
ダンブルドアが苦笑して、杖を一振りして、ミルクを出してくれた。

「…みんな幼くてかわいらしいな。若さが羨ましい」
「何の、見た目では君は、彼らに負けておらんよ」
「気にしているんだ。言わないでくれ」

ルルは実年齢より大分若く、幼く見えることを自覚していた。

「でも、杖というのは邪魔くさいな」
「ほっほっほ、セブルスが苦労したのもわかるの」
「…?」
「・・・?」
「魔法薬学を教えておる」
「あぁ、」

合点がいったルルは、確かめるように目を瞑ってその顔を思い出す。
彼はセブルスという名前なのか。
セブルス・スネイプ。なるべく続けて覚えられるよう努力してみる。

「躾のなっていない孫娘じゃと怒られてしもうた」
「私を躾けたのは貴方ではないだろう。そう言ってやれば良いんだ」
「うむ。君は正直すぎるの」

そんなことではばれてしまうよ、とやんわりと言われ、途端にルルは、思い出したのかしゅん、とうなだれた。

「わかってはいるんだ。坊や−・・・ハリーの、ことも」
「呼ぶなと怒られたのかね?」
「ああ」

それはダンブルドアやマクゴナガルにも言われていたことだった。
彼らは、ルルがハリーのことを「坊や」と呼ぶのを聞き咎めた。
それでも、ずっとそう呼びかけてきたのだ。ずっと語りかけてきたのだ。今更すぐに変えられはしない。

だがそんなルルでも、当のハリーに拒絶されたとあらば、改めるほかなかった。

「なるべく、努力は、しているんだが」
「愛しい者を前にしては、皆気が緩む」

貴方も?ダンブルドア?そう問いかけようとして、流石のルルもやめた。
正直すぎると称されたルルにも、あまりにその質問が不躾すぎると思える程には、この魔法使いは偉大であった。

「ああ、それからのう、ルル」
「何だ?」

「先ほど話したセブルス・スネイプじゃが」
「?」
「彼も、君の秘密を知っておる」

ミルクが入って大分温くなった紅茶を、ルルはごくん、と飲み込んだ。

「何だそんなこと。入学前、あなたは言っただろう。私のことは教職員には、きちんと、伝えておくと」
「そうじゃのう。じゃから、セブルスも知っておるのじゃ」
「…?」

「君を、さぞ、ジェームズに似ていると思ったことじゃろう」

乳白色に変わったカップの中身が、わずかに揺れた。


「…何故、私とあの人は、どこも似ていまい」
「君を躾たのが、ジェームズだからじゃよ」

そう言うとダンブルドアは、嬉しそうにほっほと笑った。

秘密のお茶会は、今後度々開かれることになった。




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