6.5-1 ※入学前の話「前代未聞そのいち」



「こんなことは前代未聞です」

何度目かわからないマクゴナガルの小言を聞きながら、ルルはぼんやりと上を見上げていた。
いったい何回前代未聞があるのかと不思議に思っていると、厳しく声をかけられた。

「何をぼんやりとしているのですか!こちらに来て!」
「はい」

呼ばれるまま歩み寄れば、ずいっとブラウスをあてがわれる。

「大きいですね。どうしてそうも貴女は小柄なのですか」
「自分ではわからないが、貴女はすらっとしていて羨ましい」

「余計なことはいいのです」とぴしゃりと言うと、マクゴナガルは再び棚を漁り始めた。

「先生さま!こちら!こちらはどうでしょう!?」

そこへキーキーと金切り声のような音を発しながら走ってくる者があった。
ホグワーツのしもべ妖精だ。
校章のついたナプキンをエプロンのように腰に巻き付けている。

「・・・良さそうですね」

しもべ妖精から受け取ったブラウス、それからスカートを再びルルの体にあてがい、マクゴナガルは目を細めた。

「全く、何の準備もできていない新入生なんて、前代未聞です」

マクゴナガルは大きくため息をつくと、今度はローブを探しに取りかかった。
忘れ物や、歴代の卒業生が寄付していったお古の制服がしまわれたリネンの棚は、奥からひっくり返されて無惨な有様だった。

その周りではしもべ妖精達が、洗い立ての洗濯物を山と抱えて動き回っていて、その度にシャボンの良い香りが立ち上った。

「申し訳ない」
「全くです」

それでもローブをあてがい「大きすぎますね」と目を細めるマクゴナガルを、優しい人だとルルは思った。



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