ハリーの頭は、今日一日で随分と、驚き、混乱し、喜び、翻弄された。


「ロン!」

グリフィンドールのテーブルで、組分け帽子にすぐさま吐き出されたロンを、割れんばかりの拍手で迎えた。


「ロン、よくやったぞ。えらい」

ロンの兄、パーシーがそう言って声をかけ、双子の兄、フレッドとジョージが手を伸ばして弟の頭を撫でた。
ハリーはロンと顔を見合わせて笑い合い、揃って前に向き直った。

組分けはもう二人の一年生を残すばかりだ。
「ザビニ・ブレーズ」が組分け帽子を脱ぎ捨て、スリザリンのテーブルに駆け寄って拍手で迎えられた。
その時になって初めて、ハリーは最後に一人残された一年生が、あの不思議な女の子だということに気がついた。

始めに通された小部屋で、不思議なことを言ってきた少女。


「 ルル ・ダンブルドア!」


マクゴナガル先生が高らかに呼んだその名前に、さわさわとした囁き声が絶え間無くしていた大広間は、一瞬、シン、と静まり返った。
ハリーはつい最近知ったばかりだが、その名前は、大広間の生徒達を黙らせるには十分な程、やはり有名らしかった。

「ダンブルドアって・・・」
「まさか、他人だろ・・・?」
「でも、一番最後に呼ばれたぜ・・・?」

ひそひそと囁き合う生徒達を知ってか知らずか、少女は無表情のまま、たったと駆けるように椅子に近寄り、すとんと腰掛けると、ぐいと組分け帽子を被った。

「あの子・・・」

ロンも気がついていたのか、組分け帽子をすっぽりと被った小さな少女を首を伸ばして見ていた。

彼女はハリーを「坊や」と呼んだ。
その呼び方がとても小さな子に呼びかけるみたいで、随分と驚いた。

そう呼ばれる程、自分が子供っぽいとはハリーは思わなかったし、大人に言われるならまだしも、彼女は同じ新入生なのだ。

しかも彼女はとても小柄で、ハリーだって決して新入生の子達と比べて大きい方ではなかったが(何しろ育った環境と栄養が悪すぎた)そんなハリーと比べても彼女は一回り細く、小柄で、椅子にちょこんと腰掛ける様など、長い髪も相まって人形のようでさえあった。

彼女はハリーと目が合うと、とても嬉しそうに、慈しむように優しく笑ったのだ。

『組分けが不安?』

『大丈夫、きっとあなたは、』







「グリフィンドール!!!」


帽子はしばらくの葛藤の後そう宣言し、彼女は飛ぶようにこちらに駆けてきた。
そうして、ハリーとロンの前に転げるように腰掛ける。

「同じ寮になれた」

あっけにとられるハリーに、彼女はにこりと笑いかける。

「だから、大丈夫だって言っただろう?坊や」

その微笑みと呼びかけは、ハリーを狼狽えさせるには十分だった。







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