廊下で突然腕を掴まれたのは、金曜日のことだった。

「嘘をついたな」

振り向いた先には、金髪の青い目の少年がいた。

「ドラコ」
「お前にファーストネームで呼ぶことを許可した覚えはない!」

そう言われても、ファミリーネームの方まで覚えてはいない。
ルルにしてみれば、名前を覚えていただけでも褒めて欲しいくらいなのだ。

「嘘って何のことだ」

だから呼び直すわけにもいかず、話題を戻そうと聞いてみた。

「ファミリーネームのことだ」

まだひっぱるのか、しつこいな、と思ったら、そうではなかったらしい。

「何が、ただのルルだ」
「ああ、そのことか」
「ダンブルドアの孫娘だなんて」
「違う」
「とぼけるな!」
「とぼけてない」
「そんなこと調べればすぐにわかるんだぞ」
「調べてもわからない」
「はぐらかすな」

ぱちん、と軽やかな音が響いた。

「話を聞かない坊やだな」
「なっ・・・!」
「ダンブルドアは私の後見人だ」
「っ・・・!」

ドラコは左頬を押さえてわなわなと震えている。

「名前を書く必要がある時の為に、借りているだけであって、家族じゃない」

色の青白いドラコの頬が赤くなったの見て、少し強く叩きすぎたか、とルルは思った。

(でも、話を聞かないんだものなー・・・)

「私のことはルルと呼んでくれ、ドラコ」

ルルは一度も振り返ることなく、地下牢へと急いだ。






ALICE+