珍しい依頼

 ケセドニアからカイツール軍港までの護衛は滞りなく終わった。あと一回船に乗れば今日の仕事は終了。
 幸先? 悪い気がしてきた所だ。

「アルマンダイン伯」
「ああ、護送屋か」
「何があったのです?」

 軍港が荒れていた。大体復旧は終わっているようだが、何かに襲撃されたような様相を残している。
 近くにいたアルマンダイン伯爵に詳細を聞けば、彼は小さく溜息をついてから口を開いた。

「なに、神託の盾の幼獣が少々、とだけ言って置こう」
「国際問題ではありませんか」
「ああ、頭が痛い限りだ」
「困りましたねぇ。今の世界の均衡が崩れれば私達の仕事が減るのですが」
「君はそういう人だったな」

 はて、なんの事やら。
 わざととぼけて見せれば伯爵に苦笑された。彼とは良好な関係が築けている。勿論商い事に関してと言う意味で。だからこそこんな口を利いても何も言われないのだ。

「しかし丁度良い時に来た護送屋。次の便に乗るのだろう?」
「ええ、そうですが」
「実はな……」

 私は、私が思っている以上に将軍の信頼を勝ち取っているのだとこの後に思った。まさか各国の要人を乗せる船を任されるとは思わなんだ。
 キムラスカからはファブレ公爵の嫡男。マルクトからは皇帝の懐刀。そしてローレライ教団からは。

「かの導師イオンも同乗される。護送屋、君を信頼しての依頼だ」
「導師も?」

 それは、マズイ気がする。良いワケがない。もし私がイオンレプリカだと知られれば面倒な事になる。危険な橋は渡ら無い方が良い。
 しかし。

「そうだ、できればキムラスカまで共に。受けてくれるな?」
「……」

 信頼は勝ち取っている。確かにそうなのだが、世の中そう上手くはいかない。まさにギブアンドテイク精神。
 信頼を勝ち取ったからにはそれ相応の働きが期待されるのだ。

「……承りました」
「よろしく頼む」

 ああ、シンクに何を言われるのやら。
 でも個人的には、今の導師を見れると言うのは面白い。悪い事ばかりではない。……悪い癖だ。自分が楽しめれば良しとしてしまう自分はいつもシンクに迷惑をかける。まあ、改善する気は更々無いが。

「ごめんね、シンク」

 薄笑いを浮かべながら、ケセドニアのある方角を見つめた。