「いつか、ね」
記憶に焼き付いていた。灰色の世界で、何よりも鮮やかに見えた、赤色。
真っ赤な私のひかりを、今でもまだ――
「だぁーっつっかれたー」
彼が腰掛けると、椅子は悲鳴をあげた。その音の大きさから乱暴に座ったことは見なくても分かる。ここに来たばかりの時は彼が椅子に座る度に肩を震わせていたけれど、さすがにもう慣れた。
「お疲れ様です」
そろそろ帰ってくる頃と思い用意しておいた珈琲を書類だらけの机の隅に置き、椅子にもたれながら天を仰いでいる彼に労いの声をかける。よく見ると、椅子の背もたれは半壊していた。
「あぁ、お疲れ、ひかり」