黄金の福音

私は小さいときは全てにおびえていた。
”魔女”と言う人が全て自分を嫌っているように見えた。
かあさまには言えなかった。



かあさまが私に負い目を感じているのがわかってたから。
私はかあさまととうさまがいればいいとも思ってたから。
この狭い世界だけで良かった。



でもあの日私とは正反対の色の女の子が現れた
その子が私の原点で私の始まり。



まるで小さな森のような庭様々な薬草や野草がきちんと区分けされ手入れが行き届いた庭。
そんなには今二人の少女が居た。
一人はキラキラと陽の光を反射し煌く金髪に好奇心旺盛な煌きを宿した琥珀の様な瞳な少女。
もう一人は黒髪で黒目の少女。
まるで正反対の二人は見つめ合っていた。


しばらくの無言の後に金色の少女が口を開く


「あなたが魔女の娘さん?」
「え、あ…。うん…。」
控えめに黒の少女が頷くと、その好奇心旺盛な瞳は一層きらめいて嬉しそうに表情を変える。
「やっぱりそうなんだ!私ねユリア・フリーダっていうの!ねぇ、あなたのお名前は?」
「あ…私は…カズハ・トォウフォス……。」
黒の少女 カズハはおずおずと金色の少女 ユリアにそう応える。
「カズハ!いい名前ね!」
「あ、あり、がとう……。」
カズハは嬉しそうに笑うユリアにやや困ったように返事を返す。
「ねぇ、カズハ!」
「な、なに…?」
「私のお名前呼んで?」
「えう…?」
唐突にそんなことを言われ驚くカズハ。
怯えるような顔になるカズハに
「だめ…?駄目かなぁ?」
落ち込み気味にそう言うユリアに困ったように「…それはないけど…。」と応える。
「うんじゃ、お名前呼んで?ユーリでもユリアでもいいよ!」
そう笑顔で言うがカズハは困ったような顔をして。
「んと…その…ユーリ……さん…?」と呼ぶが
「さんいらないよー。」
笑顔で言われまた困る。
「う…ユーリ……ちゃん……?」
「んー、お名前だけがいいなー?」
そう期待したようにユリアは言う。
無言が少し続き。
「…ユーリ……。」
と小さくつぶやくようにカズハがユリアの名前を呼ぶとユリアは嬉しそうに笑う。
「えへへー、カズハ!」
「…ユーリ…。」
「カーズハ!」
「ユーリ…。」
「カズハ!」
「ユーリ。」



飽きもせずそうお互いに呼び合っていた幼い記憶
”魔女”でも好いてくれる他人がいる。

そういう人はユーリ以外居るのだろうかとふと思った。

かあさまにも居るのだろうかと気になった。
そこから私は世界に興味を持った。
あの子は私の太陽。
お日様の様に笑うあの子が近くに居たら私も笑えた。

太陽に近づきすぎて翼の蝋が溶けるという人の話をとうさまに読んでもらったことが有る。
雪というものは春に太陽で溶けるというのをかあさまに聞いたことが有る



もし私がその人で
もし雪が私で



ユーリが太陽なら



蝋が溶けるとしても
雪のように消えたとしても



私は後悔はしないだろう。

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