物好きたち



訓練兵団を卒業し、配属前の休暇を過ごした後に休暇を1日残して前もって調査兵団の兵舎にカズハとハンジは居た。
前もって来た物好きであるハンジとカズハは4人部屋でそこそこいい部屋を取ることができたのだが、例年余りが入るという部屋を選んだ二人に案内した兵士は微妙な顔をしていた。
「いやぁ、調査兵団でもカズハと同じ部屋とか感謝だねっ!」
とうきうきしながら言うハンジ。
その言葉には自分には生活力がないからカズハを頼りにしていると言うのがわかる。
「生活力を少しはつけようか、ハンジ。」
そんなハンジに苦言を呈するが「無理っ!」とハンジが即答するのに困ったように笑うカズハだった。
だが気持ちを切り替えて。
「とりあえず、掃除するので手伝って下さい。」
「カズハは綺麗好きだねぇ、潔癖症ではないけど。」
「衛生面には気を使わなきゃいけませんからねぇ。」
「あぁ、カズハは医者でもあるし薬師でもあるもんね。そりゃ気になるか。」
ハンジはそういいつつ部屋の掃除を手伝った。



数時間掃除に没頭していると部屋は見違えるように清潔な空間へと変貌していた。
「いやぁ、見違えるねぇ。」
「やりきりました。」
ハンジも多少なりと貢献したので達成感はひとしおだったりする。
「あ、カズハ、解らないところがあるんだけど、バケツ片付けたら教えてよ。」
掃除用具を片付けに行こうとしたカズハの手からバケツを一つ取りハンジが言う。
「かまわないよ。バケツありがとう。」
「このぐらい大丈夫だよ。カズハにはいつもお世話になってるし。」
ハンジは言うがカズハはよくわかっていないように見える。
そんなカズハをみてハンジは思わず笑ってしまう。
カズハにとっては何気ないことなのだろう。
「本当にカズハは”お姉さん”気質だよねぇ。いやむしろ”お母さん”?」
「やめてあげてください、私よりダメージ受ける子居るでしょう。」
そう冷静にツッコミを入れるのは、カズハがみんなの世話を焼いていたので、寝ぼけて「お母さん」と呼んだのがそこそこの人数居るというのだ。
ちなみにリコとハンジも言ったのだが、あまり本人たちは気にしていない。
とくに気にするのは同年代の男子達だった。
にやにやと笑いながら言うハンジは意地が悪いとカズハは思いつつため息をつく。
「そう言えば配属前の休暇の時何してたんだい?」
ハンジは少し気になりそう質問する。
「両親と知り合いに会ってたよ?」
あまりにもいつも通りの最初の答えに不服に思って。
「もう少し詳しく!」
ハンジは言うとカズハは苦笑をして
「いつものように、父と父の知り合いで同僚の方の元で医学を学びつつ実践をして、母親の血縁の方の家に行き薬学とかを習ってたけど。」
「いつも通りだねぇ!他にはなんか無いの?」
カズハの休暇の過ごし方は大体このパターンなのでカズハは真面目だなと思いつつハンジがいう。
「どちらにもお子さんが生まれてて、1歳を迎えたことかな。」
「なにそれ、めでたいね!」
ある種のビックニュースに驚き言うハンジ。
「ハンジは何してたの?」
「あー私?私はいつも通りに本を読み漁ってたよ。」
「ハンジもいつも通りだね。」
「そうだね。」
二人して笑い合う。
「そう言えば、もしかしたらほかに2人同じ部屋に成るんだよね。」
「そうだね。」
「カズハ大丈夫?」
「問題ないよ。」
やや心配そうに言うハンジに苦笑をしつつ問題ないというカズハ。
「でも…。」
「ハンジ。」
ハンジが言い募ろうとするのにカズハは止めるように名前を呼び立ち止まる。それにハンジも立ち止まりカズハを見る。
「”魔女”と言う渾名は確かに忌言葉ですが、今の私には”魔女”という名は誉れですよ。」
そう不敵に笑い言い放つカズハ。
「カズハは強いね…。」
「ユーリがくれた強さですけどね。」
しみじみと言ったハンジにカズハは大切な宝物を見せるようにそうつぶやく。
それにハンジはユリアへの興味を強くするのだった。



部屋に戻り、ハンジはカズハからわからない部分を教えてもらっていた。
「やっぱりカズハに聞いて正解だったよー。医学と薬学に関しては時間がかかるからねぇ。」
「それでも、ハンジなら私が居なくてもできてたと思うけど。」
「買いかぶりすぎだよ。」
カズハの真っ直ぐな賞賛に照れで頬をかきながら言うハンジ。
「私は、あなたの知識欲には負けるよ。」
「私も、カズハの知識欲に負けるよ?」
と同じようなことを言って同時に吹き笑う。。
教えられたところだけが知りたかったようでハンジは伸びをする、カズハは自分の荷物から短槍を持ち出す。
「さて、私は体を動かしに行ってくるよ。」
「そうかい?私も行こうかな。」
「じゃぁ片付けるまで待ってるね。」
カズハはそう言ってハンジをまつ、その時扉がノックされて視線をハンジによこすと、頷かれたのでカズハは「どうぞ。」と返事をする。
「失礼するよ。」
と扉を開けて入ってきたのはややラフな服装で身を包んだエルヴィンだった。
「エルヴィンさん?」「エルヴィンじゃないか!」
そうカズハは疑問符をつけつつ、ハンジは喜びそんな二人の声が重なった。
「休暇を残して来た物好きの新兵が居るって聞いてね。そして選んだ部屋も余り人気のない部屋を選んだと聞いたから。」
「興味に惹かれ見に来たと。」
「あぁそういうことだよ。」
ハンジのツッコミににこやかに笑みを浮かべるエルヴィン。
「物好きだねぇ、エルヴィンは。」
「ここを選んだ君も物好きだと思うよ、ハンジ。」
「それは否定しないよ。」
エルヴィンのその言葉にハンジは気にせずに言い返す。
そんな二人の会話を聞きつつ短槍に不備がないか確認をする。
短槍には刃が作られた矛ではなく、刃の作られていない矛がつけられている。
一通り確認をした後に鞘をはめ戻すとハンジはにまにまとしながら、エルヴィンは微笑んでいるが観察するようにカズハを見ていた。
それにカズハは少々動揺し体をはねさせる。
「な、なんですか…。」
「いやー。真剣な眼差しのカズハって珍しいなー…って。」
しみじみとハンジが言う。
「まるで人がいつも不真面目みたいなんだけど…。」
カズハは苦言を呈するように言うとハンジはケラリと笑い。
「カズハは真面目だから、そういう時のスイッチが入って真剣に成るの知ってるから問題ないよ。でも普段の時ってそう真剣そうな顔しないからさ!」
と理由を言う。
「訓練兵時代から思ってたけど、カズハは興味深いよね!ユリアもすごく興味深いからすぐ眼で追っちゃうんだよ!」
熱弁を振るうように言うハンジに、カズハはなんかスイッチ入るところあったけ…と思いつつハンジの話が終わるのを待つ。
「だからカズハやユリアの観察日誌つければ楽しそうだとおもうんだよね!だからつけても」
「良くないので辞めてください。」
良いかな?と言い続けようとするハンジの言葉をカズハは思いっきり途中で妨害する。
「えー。いけずー。」
カズハのつれなさにハンジは頬を膨らませ口を尖らせつつ言う。
エルヴィンはそんな二人のやり取りに忍び笑いをしつつ見守っている。
「とりあえず、片付け終わったのなら外行きますよ。」
「そうだね。」
気持ちを切り替えるようにカズハがそう言うとハンジは同意して立ち上がる。
「何しに行くんだい?」
エルヴィンは不思議そうにハンジとカズハに問う。
二人は顔を見合わせて。
「体を動かしに行こうかと。」
「私もカズハについていこうかなって。」
ハンジとカズハが応える。
「俺もついて行っていいかな?」
それにエルヴィンはそう言うとまた二人で顔を見合わせるのだった。





準備運動をした後にハンジとカズハは二人で対人戦闘訓練をしていた。
エルヴィンは興味深げにそれを見ている。
カズハ先程から捕まえようとするハンジの手を払い返し間合いを保ち。
一気に間合いを詰めたカズハがハンジの服をつかもうとした時にハンジがカズハの袖を掴まえ有利に運ぼうとする。
が、
カズハは己の体を反転させ。ハンジの服を掴みそのまま背負い投げる。
そしてそのまま芝生の上でハンジ投げ飛ばされた。
「…また負けたっ!」
寝転び体を大の字に伸ばしてそう叫ぶ。
「でも隙を突いて攻撃できるようになってるよ?」
そう賞賛をするがハンジは不服そうな顔をして。
「その隙が餌だった次点で駄目だと思うんだけど。」
反論するとカズハはキョトンとした後ににやりと笑い。
「おや、気づいた?」
意地の悪い笑みを浮かべて言う。
「投げ飛ばされる瞬間にやられたって思ったよ…。」
悔しそうに唸るハンジ。
「くそー。あともう少しで取れると思ったのに、悔しい!」
「もう一度やります?」
カズハはくすくすと軽く笑いながらそう言うと、一気にハンジはつかれた顔をして。
「今はしんどいからやめとくよ…。」
ハンジは起き上がりエルヴィンの元へ行きまた寝転がる。
「だらけすぎだ、ハンジ。」
二人のやり取りを忍び笑いしつつ見守っていたエルヴィンが、隣で横になったハンジに言う。
「了解です、先輩殿ー。」
そう茶化しながら起き上がるハンジにエルヴィンはまた笑う。
「ハンジ、ちゃんと体ほぐして休憩したほうがいいよ。」
とカズハは水を飲んだ後にそうハンジに言うとハンジは返事をしつつ体をほぐす体操をする。
「カズハは、もう切り上げるの?」
体操を一通りやり終えて気になったことをカズハに聞くハンジ。
「時間があるし一通り振るおうかと。」
それにカズハはそう答え近くに立てかけて置いた短槍を手に持つ。
すると
「おおおおおっ!」
カズハのその言葉に奇声を上げるハンジにエルヴィンはぎょっとしハンジを見る。
「ねぇ!カズハそれって速写してもいいよね?いいよね?!!」
ハンジは興奮気味に言う。
「なんで速写したがるの……?」
それに引き気味で言うカズハ。
「いや、対人戦闘にあまり興味がない私でも、あれはかっこいいと思うよ!」
そう食い気味に興奮して言うのにカズハはその勢いに押され引き気味になってしまう。
「ただ身内での判定があるからだと思うよハンジのは…。」
「じゃぁここに全く初めて見るエルヴィンが居るんだ!張り切ってやって見せてよ!」
唐突に引き合いに出されて唖然としてしまうエルヴィン。
「ハンジ、唐突に引き合いに出したからエルヴィンさんが唖然としてますよ…。」
「どうせ軽く流すだけなんだろ?」
「えぇ、そうですが。」
ハンジのその言葉に同意するカズハに「もったいない。」と言い。
「どうせならカズハが持てる全てのを出し切ってるのみたい!!」
と続ける。
「なんでそこまで熱くなってるの…ハンジ…。」
そんな様子のハンジにたじたじとしてカズハが言う。
「だって私が見てる時にカズハが本気でやったのって、後にも先にもあの時だけだろ!あの時ちらりと見ただけでも滾ったんだよ!だからしっかり見たいっていうのは人の性だろ?!」
とマシンガントークで熱弁を振るうのにカズハはたじたじとしてしまう。
「ハンジがそこまで言うものなら、俺も気になるな。」
そんなハンジを後押しするようにエルヴィンが言う。
すると
「ほらカズハ!エルヴィンもそう言ってるんだから!」
ハンジがエルヴィンを追い風にしてそうカズハに言う。
しばらく押し問答が続いたが
「あぁもう、判りました判りましたからっ!」
カズハが結局折れたのだった。



「はぁ…期待に添えられるか、わかりませんからね。私なんてまだまだなんですから…。」
そんなカズハはハンジとエルヴィンと向かい合いやや離れた位置に立ちため息を付きつつ言う。
「カズハのが見たいから問題ないね!」
「右に同じく。」
笑顔で二人が応えるのに深いため息をつく。
「了解です…。まぁやりますか…。」
カズハがそうつぶやいてエルヴィンとハンジに一礼をしたあと目を閉じる。
深く息を吐きそして吸う。
そして眼をあける。
空気が一気に張り詰めたものへ変化した。
そしてそのまま腰を落とし横にひねるように向きを変える、短槍の柄がしなり、空を切る音を響かせる。
槍の基本である薙ぎ払いや、突き、他にも叩く、巻き上げる、切る。更にはそこに蹴りなど格闘術も混ざり行く。
すべてが円状に沿い動いている。
「どうだい?すごいだろ。」
そんなカズハの動きを速写していくハンジは、そうエルヴィンに言う。
「あぁ…、ブレードの鍛錬してる時に一度だけ手合わせしてみたが、槍だとこうも成るのか…。」
訓練兵団に視察したあの時の一度だけの鍛錬を思い出しつつつぶやく。
そして幼い時自信を持って「大丈夫。」と自分に言った理由も納得ができる。



「エルヴィン。」
しばらくカズハの槍の動きを見ているとそう自分を呼ぶ声が聞こえた方向に視線をやる。
「ミケ。」
長身で茶髪の青年 ミケ彼もまたラフな服装だ。
「何をしているんだ?」
「彼女を見ている。」
そう言ってエルヴィンはカズハに視線を戻すと、ミケもカズハを見る。
しなやかに短槍を操る、まるで短槍と神経がつながっているかのような立ち振舞にエルヴィンもミケも感心したようなため息をつく。
「凄まじいな。」
「あぁ。」
まるで多数を相手取る様な動きを見せて薙ぎ払うと終わったのか立ち止まり呼吸を整えるカズハ。
もう終わったのかと声をかけようとするエルヴィンだったが。
「まだ終わってないと思うよ、エルヴィン。」
ノートとカズハから視線を外さないハンジにそう言われる。
「なぜだい?」
「カズハ終わりにする時はもう少し気配が緩むからさ。」
ハンジがそういいカズハを見直すと確かにまだ張り詰めた雰囲気をまとっているのがわかる。
むしろ先程より緊張した面持ちにも見える。
「多分これからが本番だよ。楽しみだなぁ…。」
楽しみで声を震わせそういうハンジにエルヴィンとミケは訝しげな視線をやりつつカズハを見つめる。
カズハは横向きに立ち、短槍を持ったまま礼をする。
先程とははじめから違う、先程は相手側に礼などせずに短槍を振るっていたのだから。
薙ぐようにまず一閃、そしてまた一閃。
しかしそれは攻撃ではなく防御のために振るったのだろう、短槍の柄を盾にし受け流しそしてまた振るう。
確実に避けるように防ぐように動くカズハ。
かなりの力量の相手と向かい合っているのがわかる。
叩き、巻き上げ、切る。しかし相手には届いていなく、すべて弾かれ受け流されているのだろう。
カズハの動きで相手の動きが想像できてくる。
カズハが防御すれば相手は突きをしかけ、カズハが薙ぎ払うのであれば相手の一閃を確実に邪魔をしているのだ。
彼女が思い描く相手との明らかな力量の違いを感じる。
鍛錬にそんな相手を選んだ理由が解らずにいると、喉を反らさせたまま動きを止めるカズハ。
その喉元に短槍を突きつけられているように見えた。
それで一連の流れが終わったのか姿勢をただし礼をして戻ってくるカズハだった。



「カズハお疲れ様。」
ハンジとの戦闘訓練のときは汗をかいてなかったカズハが珠のような汗を流し戻ってきたのでカズハが持ってきていたタオルをエルヴィンは渡す。
「ありがとうございます。」
そんなエルヴィンにカズハは笑顔でお礼を言う。
先程の張り詰めた雰囲気など嘘だったかのように見える。
「紹介するよ、ミケ・ザカリアスだ。」
ふと興味深げにミケがカズハを見ていたのでエルヴィンが紹介する。
「はじめまして、カズハ・トォウフォスです。」
カズハがそう礼をするとおもむろにミケはカズハに近づき腰をかがめ匂いを嗅ぐ。
「あの…?」
「ミケは人の匂いを嗅ぐ癖があってね、我慢してくれ。」
そう苦笑して言うエルヴィン。
「汗臭いと思うんですが…。」
「いや、汗臭くはない。甘い香りがするな。」
カズハは困った顔をし何気なく呟くと、その呟きにミケは答えるように言う。
「あの感想を言わないで下さい。恥ずかしいので…。」
そう恥じるように言うカズハの匂いを嗅ぎ続ける。
「ミケ、いつもより匂い嗅ぐのが長くないか?」
エルヴィンはそういいつつ、ミケからカズハを遠ざけるように自分の方へ引き寄せる。
抱きしめられ一気に顔に熱が集まるのをカズハは感じた。
「とても心地よく良い匂いだったからな。何の匂いか気になったんだ。」
ミケがそう言うとエルヴィンも鼻をカズハの寄せ匂いを嗅ぐとそれにカズハは固まってしまう。
「たしかに初めて嗅ぐような甘い香りだな。」
「エルヴィンさん、あなたも感想を言うのはやめてください…。」
と脱力しつつ言うカズハだった。
「カズハがなんか疲れてる?」
エルヴィンの横に座り脱力しぐったりとしているカズハを見てつぶやくハンジ。
「速写終わったのか?」
それに気づきエルヴィンが言う。
「あぁ、終わったよ!」
とノートをひらひらとさせエルヴィンに渡す。
ノートはカズハの動きがよく描かれていた。
「よくかけているじゃないか。」
感心したようにエルヴィンが言う。
「観察は研究に必要だからね。」
そんなエルヴィンの言葉に胸を張りハンジが言う。
「気になるものとか興味のあるものはすぐ描くものねハンジは。」
「それが研究につながるからね!」
胸を張り誇るように言うハンジをカズハは微笑みつつ見ているのに気づき恥ずかしそうにする。
「カズハやめて!そんな笑顔で居ないで!恥ずかしい!」
カズハは、うわあああって言うように顔を覆うハンジに苦笑する。
そんな二人のやり取りに思わず吹き出すエルヴィンとミケだった。





夕方になり鍛錬が終わって部屋に戻り汗を流そうということにしたカズハとハンジにエルヴィンやミケも一度部屋に戻ることにした。
先をハンジとミケが歩きその後にカズハとエルヴィンが続く。
「そういえば、なにか注意することありますか?」
ふとカズハが気になったことをエルヴィンに聞く
「別の兵団から補充で来た人間には注意するのがいいだろう。」
エルヴィンがそう言うとカズハは首をかしげてしまう。
「調査兵団に元から所属している者は皆仲間意識が強い。だが他の兵団から出向いてくる者は年々騒ぎを起こすこともあるからな。」
すっとカズハの眼が細められる。
ちらりと前にいるハンジを心配げな視線を向けた後に前を真っ直ぐ見る。
気を引き締めたのがわかる、それにエルヴィンは体を屈めさせ、カズハの両肩に両手を置き立ち上がる。
「エルヴィンさん…。」
カズハも立ち止まりそうエルヴィンの名前を呟く。
「カズハ、今は心配しなくてもいい。君たち新兵が入ったから出向きは今のところは無いだろう。」
そう耳元で囁く。
「俺やミケも気をつけよう、だからカズハは安心するといい。」
と行ってカズハの背中を片手で押すように前に進むエルヴィンだった。

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