それは柔らかな飴色の

エルヴィンは今書類を夜遅くまで整理をしている。
色々あり書類を片付けるできる時間が今しか取れなかったのだ。
そんな中自室のドアを控えめにノックをされ
「どうぞ」
エルヴィンは書類から顔をあげずに返事をする。
「失礼します。」
よく知るカズハの声に思わず顔をあげドアの方を見る。
髪を下ろし、ストールを羽織ったカズハがティーセットを持ち入ってくるのに驚くが、嬉しげに口元が弧を描く。
「カズハか。どうしたんだい?こんな夜更けに。」
「団長の部屋から灯りが漏れていたので。」
そう言って部屋の中央にあるテーブルにティーセットを置きティーカップに注ぎ入れる。
紅茶より明るい飴色の液体がティーカップに満たされほのかに甘いが鼻をくすぐる。
「花茶です。ここに置いておきますね。」
カズハはそう言って手が届きなおかつ邪魔にならないところにティーカップを置く。
「あぁ、ありがとう。」
そうエルヴィンはカズハに礼を良い花茶に口をつける。
口の中にほのかに甘い香りが満ち、張り詰めた心を落ち着けてくれる。
「あぁ、ほっとする、な…。」
しみじみと言うエルヴィンにカズハは微笑み。
「それは良かったです。」
と応える。
いつもならじゃまにならないようにすぐ離れるカズハだがじっとエルヴィンをみつめ、それにエルヴィンもカズハを見つめ返す。
「団長、書類の整理引き継いでおくので、お休みになられて下さい。」
「いや、だが…。」
「お休みになられて下さい。」
言い募ろうとするがカズハは真っ直ぐエルヴィンを見つめる。
「…。」
「…。」
お互いに譲らないのはわかっているが。
しかし花茶のおかげで張り詰めていた心が落ち着き穏やかな気持ちになっていたエルヴィンはあくびをしてしまう。
「はい、団長寝てくださいね。」
とまるで勝ったかのような笑顔でカズハに言われ苦笑をする。
「わかった、少し眠るとしよう。」
「えぇ、そうして下さい。」
「カズハも程々にして戻って寝なさい。」
「わかっています、おやすみなさい。エルヴィンさん。」
「あぁ、おやすみ。カズハ。」
ベッドに横になりぼんやりとカズハを見守る。
そんな自分のために灯りを弱くしてくれるカズハに心があたたまるのを感じる。



瞼を閉じるのだが、ふといつもの思考に囚われ眠れず、瞼をあげる。



真剣に作業をしているカズハを見つめる。
ランプの灯りによりカズハの普段は黒く見える瞳が青く煌めいてそれに眼が奪われる。
しばらくその状況だったがふとカズハがエルヴィンを見て視線が合う。
「眠れませんか?」
「あぁ…。」
小さくそうエルヴィンが応えるとカズハは静かに近づきベッドの前に膝をつき。
そっと横になっているエルヴィンの頭に手を伸ばし、優しく撫でる。
「カズハ?」
「かあさまが私が寝れない時よく頭を撫でてくれたので。」
優しく、優しく、優しく。
髪を梳くようになでられ瞼が重くなりエルヴィンの意識はゆっくりと落ちていった。
そんな様に微笑みしばらく優しく撫でつづけていたが、机に向かい直し書類を片付けるカズハだった。





空が白む時間にエルヴィンは目が覚める。
「俺は…。そう言えば、寝ていたのか。」
ベッドから体を起こすと軽い音を立てて何かが落ちたのでそちらに視線を落とすとカズハがここに来たときに羽織っていたストールだと言うことに気付く。
ふと口元にストールを寄せるとカズハと同じ甘い香りがするのに思わず微笑みを作る。



ベッドから立ち上がりふと机の方を見る
書類の整理は終わらせてあるのがわかりありがたく思いつつふと視線を下ろすとカズハが机に突っ伏して寝ているのが目に入り驚く。
灯りが消えていたので居ないと思ったからだ。
起こさずにそっと近寄る。
大体カズハはもう起きるぐらいの距離に入り、更に近くへ近づく。
それでも起きないので触れようとする。
指通りの滑らかなその髪に触れてもカズハは眼を覚まさない。
「俺は異性として見られていないのだろうか…?」
と口に出してしまう。
「それはそれで複雑なのだが…。」
憂う様に眼を細めややため息をつく。
だが口元は緩み異性として複雑ではあるが、ここまで気を許してくれるのは嬉しくも思ってる。
そっと髪質を楽しんでいた手の甲で頬に触れる。
「…冷えているな…。」
いつもは自分の体温よりやや高めなカズハの体温が低く感じ、心配になり起こさないようにそっと抱き上げベッドの上にそのまま座り己の体温で温める様に抱きしめる。
じんわりと自分の体温で温まり冷たさがカズハから抜けていく、こうして長く触れているのに喜びを感じ。
カズハから香る、淡い甘い香りにやや黒い欲望が首をもたげる。
その欲望に耐えるようにカズハが起きない程度に強めに抱きしめる。
「ん…ぅ…。」
とカズハがもぞりと動いたので起こしてしまったのだろうかと焦り固まるが、収まりのが良いところに体を動かしたかったのかエルヴィンの胸あたりのシャツを掴み完全にエルヴィンに体を預けるような体勢になる。
そして安心しきったようにへにゃりと笑うカズハに顔が熱くなり、まるでごまかすようにカズハの頭に口元を寄せた。





しばらくそのままだったが時刻を告げる鐘が鳴る。
「ん…ぅ…?」
その鐘の音で眼が覚めたのかカズハが動く。
「…………?」
ぼんやりとしじっと自分を見つめているカズハに忍び笑いをしてしまうエルヴィン。
「カズハ、おはよう。」
「エルヴィンさん、おはようございます……?」
まだ意識が起ききって居ないのか眼を瞬かせて首を傾げつつエルヴィンを見つめつづける。
そしてはっとし、抜け出そうとするカズハ、それに若干の寂しさを感じつつもカズハを解放してやる。
「お、おはようございます。エルヴィンさん。なんかすみません…。」
顔を赤く染めうつむくカズハに微笑む。
「いや、問題はないよ。」
「支度や珈琲の準備してきますね。」
「あぁ、頼むよ。」
わたわたと慌てて昨夜持ってきたティーセットを片付けて部屋を出て行く。
いつもそつなくこなしているカズハがストールの存在を忘れてることに自分が異性として見られていないことはないのだろうかと思ってしまうエルヴィンだった。

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