(若干「不器用の衝突」の続き)
「そういやずっと思ってたんだけどな、俺たち名前つながりだよなあ」
はい? と思わず隣の男の顔を見た。平坂硝太郎という人。玉狛支部の辻崎隊所属の攻撃手だ。玉狛ということもあって俺は特にこの人と関わりがあるわけではなかった。ではなぜ今こんなことになっているのかと言えば、辻崎──便宜上今はシオと呼ばせてもらうことにするが、シオが彼女の兄である辻崎司さんを連れて一ノ瀬隊の作戦室にやってきたからである。それに平坂さんはついてきたらしい。先程から辻崎兄妹がものすごく葵先輩に頭を下げている。どうやら数日前にいざこざがあったようだ。司さんの方は嫌々というか、無理やりシオに頭を下げさせられているという方が正しいのだが。葵先輩はいいってと遠慮していて、秀一さんと三枝さんは後ろでそれを面白そうに見ていた。俺と平坂さんはまたそことは少し離れた出入口の近くでその光景を見ている。
「俺たちほら、名前が『ショウタロウ』だろ? だから名前つながり」
前から言おうと思っててさあ。平坂さんはゆるりとそう言った。この人は一見緩くて、歳ももう引退していてもおかしくないような年齢であるのに未だ現役として活躍している。本人はトリオン能力がどうのと言っているが、多分俺はまだこの人に勝ち越すことはできない。経験の差も、実力の差も大きいのだ。
「……平坂さんはいつも平和そうな感じですよね」
「え? そうか? 俺そんなに緊張感ない?」
「いえそうではなくて。余裕がある、というか。俺は未だ、異世界の存在と戦争をしているという自分の現状に複雑な気持ちを抱くこともありますから」
尊敬しているんです、そう素直に伝えればぽかんとした顔で俺を見る。おかしなことを言っただろうか。でもこれはすべて本心だ。平坂さんが戦っているところは一度か二度くらいしか見たことはないが、それでも伝わってくるものはある。同じ、剣を手にする者として。
「巽はなんていうか、あれだな。輝いてるけど深い」
「どういう意味ですか?」
「んー、お前、まだ十五だろ? だから俺なんかよりたくさんの未来がある。それが俺にとっては輝かしい。でもお前はそれに加えて、なんだろうな……」
もごもごも言葉を口に含んだ平坂さんは、うん、と言って俺を見る。
「お前は強くなれるよ」
「!」
「あ、やっぱ俺みたいなおじさんの言葉は信用できないかな。臭かった?」
今度はこちらがぽかんと顔を見る番だった。平坂さんは自分のセリフに照れているのか後悔しているのか、少し恥ずかしそうにはにかんでいた。自然と口角が上を向く。俺、この人のこと、好きだな。自然とそう思った。
「今度、個人戦させてください。あなたの引退の前に、きっと超えてみせます。平坂さんの期待に応えます」
そっか。平坂さんはニカリと笑った。まだまだ未来に輝きを残した、素敵な笑顔だった。