「あ」
「あ?」
「あっ」
「……」
ある日の昼下がり、本部の休憩スペース。そこに四人の隊員がばったり出くわした。そこでコーヒーを飲みつつ雑談していた富田と三輪、そしてたまたまそこを通りかかった辻崎兄妹。なんだか微妙な空気が流れる。
「えっと、こんちは辻崎、辻崎さん」
「あ、はい、こんにちは富田さん。えっと……三輪さんも」
「おいシオ、いつの間にこんな男と知り合ったんだ。俺は聞いてないぞ」
こんな男って。富田は思わず辻崎兄を見た。じっとり睨まれている。さっきから嫌なビジョンしか見えないんだがどうしたらいいんだ。隣の三輪もなんだかいつもよりブスッとしている。こっちは辻崎妹に対してのようで、辻崎妹──シオは一歩後ずさりした。
「富田先輩、辻崎と知り合いだったんですか」
「え? あー前に廊下で寝ててそこを玉狛まで運んだことがあってさ」
「その節はお世話になりました……!」
「おい俺はそんなこと聞いてないぞ」
だいたいな、と辻崎兄、司が口を開く。嫌なビジョンが見えた。やめろ、言うな。
「こいつはトリオン兵が倒せないんだぞ。そんなやつがボーダーにいてどうする!」
「──!」
「あんたッ」
「司!」
「いや、いいよ。本当のことだし。おかしいことは自覚済みです。だからいいんです」
辻崎司は旧ボーダー時代からいる人間で、誰よりも人の命に気を使う。それは富田もわかっていた。きっとこれはトリオン兵にやられたりするかもしれないということを危惧して言ってくれたのだと。それでも、富田の副作用に映ったということは、そういうことだ。
「……行こう、三輪」
「ですがっ」
「いーって。悪いな辻崎、変な気分にさせて。俺別に辻崎さんのこと嫌いになったりしないからさ!」
「富田さん……」
「シオ、俺たちも玉狛に帰るぞ。用はもう済んでる」
二組は反対方向へと歩き出した。
「あんな言い方ないじゃない! ……富田さん、悲しんでたと思うよ」
「シオ、俺たちはいつ死ぬかもわからない戦場にいるんだぞ。あのままトリオン兵を恐れて戦闘員として生きてたら、いつかあいつが自滅する。自分を恨んで死んでいく。俺はそういうやつを何人も見てきたんだ。……なら先にやめた方がいい。例え突き放してその結果俺が恨まれても、だ」
「富田先輩はあんな風に言われて悔しくないんですか」
「……そりゃ悲しいとは思うけどさ。あの人は他のやつと違って馬鹿にして言ってるんじゃないんだ。俺のこと心配してくれてんだよ。それに、市民の命のことまで考えてるんだ。だから、俺もあの人に認めて貰えるようにもっと訓練しないとなって、そう思うんだ」