千空おめでとう〜〜!!(1/4)
時系列ごちゃごちゃ。ペルセウスの中で迎えた設定です。
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「千空、ホント生まれてきてくれてありがとうじゃないと私今頃この世にいなかったしいや私だけじゃなくて他のみんなもそうなんだけど」
「・・・・・・んあ?」
「千空が生まれてきてくれたおかげで地球が救われるの、ホントヤバいよね、ホントに、この状況じゃ滅多なプレゼント用意できなくて本当にごめんなさい、でも私は」
「わり、熟睡してる時にその早口言葉は聞き取れねぇわ」
今日は私が石化から目覚めて初めてやってきた千空の誕生日!年明け早々の一大イベントである。私が日付が変わった瞬間におめでとうを言いたいタイプの人間だということは、何千年前から変わらない。以前はメールやSNSで済ませていたけれど、今はそんなものは存在しないので、直接口で言う他なかった。
というわけで、私は熟睡中の千空をたたき起こした。
「テメーには人間の心ってものがねぇのかよ。徹夜明けのところ起こしてまで言うことかァ?それ」
「だって、だって、私本当に千空のことお祝いしたくて・・・だって千空大好き人間だもん私・・・ほら、コハクちゃんやゲンさんと同じ・・・」
「俺を好きって気持ちが少しでもあるんなら、その少しの気持ち駆使して朝まで待つなり気遣ってくれ・・・頼むから」
千空は寝っ転がったまま私のことを睨みつけた。マジで徹夜明けらしい。若干クマが出来かけている両目をうっすら開けて、私を見上げている。眠そ〜・・・。
そうだよね、普通そうだよね。気持ちよく寝てるところを起こすなんて、人間のすることじゃないよね。・・・千空って普通じゃないけど私なんかより常識人なんだよね。
「千空、ごめんなさい」
「分かりゃいい。俺ァ寝る」
「千空・・・」
掛け布団を掴んで、光の速さで頭の先までかぶる千空。髪の毛がちょっと出てて可愛い。このままおやすみをするのは名残惜しくて、そのふわふわ髪の毛を手で触れていたら千空が掛け布団から目を出した。
「何してる」
「千空、おめでとう」
「・・・・・・」
ふわふわふわふわ
「千空、おめでとう。お誕生日」
「あ゛ー・・・どうも。おやすみ」
やったー!!千空がお返事してくれた。それだけで満足だ。それだけで。千空とまたこうしてお話できるようになって、私は本当に感謝でしかない。千空、本当に生まれてきてくれてありがとう。そして私を石から助けてくれてありがとう。
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夜明け。
「千空ー!!お誕生日おめでとう!」
「あァ!?またかよテメ、何遍言や気ぃ済むんだよ!」
「ふふ、ナマエちゃん、ずうぅっと前から張り切ってたもんね〜。千空ちゃんにそれ伝えるの」
船内での朝ごはんを味わっていたら、千空が起きてきた。思ったよりずっと早かったな。昨晩は本当に眠そうだったから今日はずっと寝るつもりなのかと思ってたから、少し驚いてしまった。
慌てて千空が座る場所を開けて、新しいお皿にフランさんお手製のスープをよそう。彼はさっそく「いただきま〜」をして食べ始めた。
「そうそう、私ちゃんとバッチリ狙ってたんだよ?何も考えずに深夜に千空起こしたわけじゃないんだから」
「本当かァ?」
「ほら、地理の授業思い出してさ!この船の進行速度と経度の関係から、どのタイミングで日付越すのか計算したの」
「へぇー!面倒くさがりのテメーがそこまでやったのは感心するわ。こだわりってのはスゲェな」
はっ!千空が私のことを褒めてくれた。嬉しいなぁ、千空はすごいと思ったことはすごいってちゃんと言ってくれるんだよね。そういうところが好き。
「ちな、龍水ちゃんに聞いてたよ」
「だろうな。そうだろうと思って逆に素直に感心してやったわ」
思ったことをそのまま口に出すところも好きだよ!千空!
千空は美味しいスープをもくもくと口に運んでいた。続けて起きてきた杠ちゃんやニッキーが今日の主役を見つけておめでとうと言うのを、やっぱり「ん」と言うだけで簡単に済ませてしまう。
分かってる、彼は皆の言葉をただないがしろにしているんじゃなくて、単純にイベントごとに感心がないのだ。皆もそれが分かっているから、それ以上突っかかったりしない。まあ、私を含む一部の人以外は。
「千空ちゃん、もちこれで終わりじゃないからね。今日は寝れないと思った方がいいよ」
「そう、今日の夜は宴会だよ!龍水くんとフランさん中心に皆が色々なプラン立ててくれてるから、お楽しみにね」
「ククク、まーあテメーらそういうの好きそうだし、それくらいはやんじゃねえかと思ってたわ」
「へへーん。それでさ、千空」
「ん?あ、ゲンおかわり」
私はスプーンを置いて、真剣な面持ちで千空に向き直った。彼はそれを一瞥するだけで、既に食べ終わって暇していたゲンさんにおかわりを要求。気にせず話を続けた。
「千空にプレゼントがあるの。渡すのは夜だけど、まずはAかBか選んで」
「プレゼントだ〜?いいよそんなん。どうせロクなもんねぇんだろ」
「千空!たしかに前より良いものなんて用意できなかったけど!気持ちはこもってるからありがたく受け取りなさい!」
「・・・・・・んー、じゃAで」
ふむふむ、Aね。メモメモ。
「ナマエちゃん?プレゼントって二種類も用意してたっけ?俺知らないんだけど・・・まさか仲間はずれ!?」
「あ、AかBかっていうのはプレゼントを渡す時に私が添える言葉のことで」
「なるへそ〜〜。そこまでやってこそナマエちゃんだよね」
「んな言葉まで考えねぇでも・・・ブツなんてテキトーに渡してくれるだけでいい」
「なによ!そんな危ないものみたいな言い方しちゃって!」
千空っていつでも自分曲げないよね。それでも人望が厚すぎるの、さすがとしか言いようがない。
今日の宴会はずっと前から楽しみにしてたから、ようやく迎えることができて嬉しい。待ち望んでいた分、精一杯お祝いしてあげることにする。
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「・・・で、テメーなに酔っ払ってんだよ」
「・・・うう、う」
夜。宴会の真っ只中。私はぶっ倒れた。
成人組が近くで飲んでいたからかなんなのか知らないが、カルピスが入っていたはずの私のジョッキにいつの間にかビールが注がれていたのだ。うわ、これ現代の大人が合コンとかでやらかすやつじゃん。
漫画やドラマはどのジャンルも見ていたけれど、恋愛系ファンタジーを信じない私はそんなシーンを見ては鼻で笑っていた過去がある。それを実際に自分がやってしまうなんて・・・。
「・・・千空、ごめんなさい。私なんかに構わないでいいよ。ほら戻って、私勝手に寝てるから・・・」
「バカ一人でほっとけるわけねぇだろ」
「バカじゃない・・・」
「てか、アイツらもう主役とか関係なしに騒いでるし。今更俺がいてもいなくても変わんねぇよ」
バカじゃないもん・・・。たしかに、よく確認せずにそこにあったジョッキを掴んだのは悪かった。そもそもジョッキで飲んでいたのが悪かった。だってジョッキってカッコイイじゃん・・・大人みたいで・・・大人じゃないけど。
動かない頭でそんなことをつらつらと言い訳していたら、脳天と顎が両手で挟まれ無理やり口が閉ざされた。
「いいから、何も喋んな。とりま寝ろ」
「うあうんあんあ」
「喋ろうともすんな!」
頭を叩かれた。容赦ない一撃だった。なんというか、ボヤボヤしていた頭がさらにボヤ〜ンとして・・・とっても気持ち悪い。頭を抱えて体勢を変えると、さすがに申し訳なく思ったのか、千空は小さく「わり、つい」と呟いた。
せっかく千空の誕生日なのに。日付が変わるまでどころか、朝まで起きてわいわいするつもりだったのに・・・しかも本人に介抱されて。こんなんじゃ台無しだ。
「千空、ごめんね。・・・気分下がっちゃったよね」
「いい、いい。謝んな。気にしてねぇ」
「・・・・・・あのね、千空」
「だァから・・・!いい加減にしろ!さっさと寝ろっつってんのに!」
気遣っているのか、叫びながらもちゃんと小声で叱られた。同時に掛け布団を頭のてっぺんまで被せられてしまう。なんだか夜と立場が逆転してるなぁ。
しばらく静かに過ごしてから、布団から顔を出した。千空を見上げると、彼は壁に寄りかかって、天井からぶら下がる暗い照明を見つめている。
「あのね、千空」
「テメー・・・何度言わせるつもりだ」
私の視線に気がつくと、目だけで私を見下ろしてきた。鋭い目付きだった。うわあ、千空ちゃんって近くで見たらなんかイケメンじゃない?その顔で見つめられると、なんだか恥ずかしくなってしまう。
掛け布団を目元まで上げる私。そして小さく呟いた。
「・・・お誕生日おめでとう」
「またそれか」
「私、千空がいたから今こうして酔い潰れることができるの。だからこんなの・・・全然へっちゃら」
今も石のままでいるのに比べたら。
「千空が私の近くにいてくれて、本当に幸せだよ。・・・今日、それを言うつもりだったの」
「あ゛ー、AかBか選んだやつのか」
「うん、それ・・・」
「んな大層な言葉・・・ま、テメーにしてみれば挨拶みてぇなもんか。ありがた〜く受け取っとくわ」
さっき私が動いたおかげで変にめくれてしまった布団を乱暴に直しながら、そうやって笑顔でお礼を言う千空。頭がぼんやりしているからだろうか。なんだか視界がキラキラしているような。
「んで、ちなみにもう一個の方は何を言うつもりだったんだ?」
「ああ、Bの方はね・・・『千空大好き、付き合って』って言うつもりだった」
「・・・・・・ッア゛!?」
私の発言に驚きまくったのか、布団を全力でめくられた。きゃー、はれんち千空。もともと小さくしていた体をさらに小さく抱きしめて、冷気に耐えるように目を閉じた。
「お前なぁ・・・」
「プレゼントは・・・スイカちゃんが渡してくれるはずだよ。皆で会議してる時にすっごく渡したそうな顔してたから、おまかせしたの」
「お?テメー今のなかったことにするつもりか?」
「だって千空・・・そういうのあんまり興味ないんでしょ?私、伝えるだけで満足なの」
よし、伝えたいことも伝えたし、千空がうるさいからさっさと寝ることにする。さっき千空にはがされた布団を奪い返して、改めて目を閉じた。
その時、頭に手を置かれる感覚がした。
「オイナマエ。地球復興した後に絶対返事してやっから、返事するまで待っとけよ」
「・・・返事?」
「あぁ、全人類救ったら『イエス』って返事してやっから、そん時まで良い子で待ってろ」
「・・・・・・」
今の働かない頭では、十秒くらい真剣に考えないと千空が何を言っているのか全く理解できなかった。しばらく黙っていると、頭に置かれた手が少しズレて、親指で額を撫でられる。
「・・・俺もな、割とテメーのこと好きだ。ただこれがナマエと全く同じ感情かって言われると・・・少し違ぇかもな」
「・・・・・・?」
「俺は科学と一緒にテメーのことがちょっと好きってだけだから・・・ま、付き合うくらいなら付き合ってやってもいい」
「・・・・・・」
「んなの、科学の端っこにテメーが加わるだけだからな」
どうしよう。今日は千空の誕生日なのに、千空から最高のプレゼントを貰ってしまった。
「んじゃ、この話はここまでな。分かったらさっさと寝ろ」
・・・寝られるわけがなかった。