現パロ・同棲。直接的な表現はありませんので微R18。
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「・・・んう」
前触れもなく突然目が覚めた。けれどもまだ目を開く元気はない。何故か体が動かない。暖かい毛布の中、それでもわたしは体勢を変えたくて、ほんの少しだけ手や足を動かしてみる。そうこうしているうちに、なにやら自分が毛布だけでなく、他にも何か別のものに包まれていることに気がついた。上半身にまとわりつく重いもの。わたしのものじゃない温もりを感じる。なんだろうこれは。なんとなくただならぬ雰囲気がして、うっすらと目を開いた。
「せんく」
そこには、千空がいた。千空のきれいなお顔があった。目の前に千空の顔が、というか首があった。わたしは驚いてすぐに目を閉じた。何かがおかしい何かがおかしい。どうしてわたしは千空の腕の中で寝ているんだろう。千空は今日帰ってこないって聞いてたのに。寝起きで頭がはたらかない。昨日の夜のことがぜんぜん思い出せない。・・・うーん。これはたぶんゆめだ、そうだゆめなんだ。こんなに実感が湧かないのだから、これは今わたしが見ているゆめに決まっている。そうだと分かれば話は早い。わたしは二度寝をするべく千空の服を手繰り寄せて距離を縮めた。暖かい。
「・・・ナマエ、起きたか」
ゆめの中の千空が突然しゃべり出した。ほんの少し驚いたけれど、ゆめの中なのでそんなに驚かなかった。私は小さな声で「起きてない」と返事をした。そんなことよりもわたしはもっと千空に近寄りたくて、服を握る手に力をこめる。千空の胸元に額をこすり付ける。
「くっくっ・・・こりゃ寝ぼけてんな」
ゆめの中の千空が笑っている。なにを言っているのか分からないけど、わたしの頭が千空の大きな手で撫でられている感じがしたのは分かった。なでなで。わたしも真似をして千空の背中を撫でてみる。シャツがめくれ上がっていたみたいで、必然的にそこは素肌だった。暖かい。撫でるだけでも満足だけれど、なんとなく撫でるだけでは飽き足らず、わたしは親指と人差し指の側面で軽くつまんでみた。爪で軽くひっかいてみた。あんまり楽しくなかった。
「・・・いい加減に起きろよ」
彼の低いささやき声が聞こえたかと思ったら、千空がわたしの頭を軽く叩いた。いたくないけど気分的にいたい。ふるふると頭を振ると、今度はその手がだんだん下におりてきた。それが首もとに到達すると、やけに優しくうなじを撫でてくる。くすぐったい。我慢できなくなって身をよじると、千空はすぐにやめてくれた。その代わりに、千空の手はもっともっと下まで滑りおりてきた。脇腹を過ぎて、腰を過ぎて、太ももに到着すると、その周辺をさわさわと撫で始める。焦らすような速度でゆっくりと、ゆっくりと、触れるか触れないかの瀬戸際で。くすぐったいというよりは、だんだんもどかしい気持ちになってくる。千空の服を掴みながら、なんとか必死に耐えて耐えて耐えていると、少しして、千空は私の体をかるく押してあおむけにした。何かが私の上に乗っかっているような感覚。言わずもがな千空だった。うっすらと目を開いた先に、卑しい微笑みが見えた。
ゆめの中の千空におかされた。
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「千空のバカヤロー」
目を擦りながら寝室を出ると、千空は早くも台所に立っていた。どうやら朝食を作っているところらしい。千空の幅広い知識を元にした最強の献立は、とっても体に良いからオススメだ。しかも美味しい。でも、いつもは完璧な朝食を完成させた後に私を起こしにくるから、今日は随分と早起きしたようだ。千空は驚いたように「おはよう」と言って、一度フライパンから手を離した。
「朝っぱらから何言いやがる」
「だって・・・千空が」
「俺がなんだ?」
私の腰に手をまわし、優しく優しく引き寄せる。そして、目を擦る私の手を軽く取り払うと、いつものようにそっと口付けをした。目覚めのキス。そうは言っても、なかなか目が覚めることはない。私は千空から離れた。
「今日のね、夢に出てきた千空がとっても変態だったの」
私の言葉に、千空は少し目を見開いた。その後すぐに状況を理解して、大袈裟に口角を上げる。けれど、私はそっぽを向いていたから彼の些細な反応に気づくことは無かった。
「そりゃ、つまり自分が変態だってことを言いたいのか?」
「違う。変態は私じゃなくて千空なの」
「テメーの夢に、他人の俺が干渉できる訳ねーだろ」
「でも・・・」
「でもじゃねえ。さっさと顔洗え、もうすぐ朝飯だ」
千空に背中を押され、洗面所に向かう。千空の言うことはいつも正しい。今日も例外なく正しい。夢は、自分の脳内で見ているものだから。でも、今日の夢に出てきた千空は本当に変態だったの。私が知らない千空だったもん。朝なのに変なところ触るし変なところ触るし、変なところ触ってきた!夜するのはいつものことだからまだ良いけど、朝からそういうことをするのは、なんだかイケナイことをやっているみたいで気が引けるのに。いやまあ夢の中が朝か夜かなんて、よく分からなかったけど。
ばっしゃあ。冷たい水を顔面にぶつけたあと、ふわふわなタオルにその顔面をうずめる。夢の中の千空は、私が想像している千空と同じなのだから、つまり私が想像する千空は、とっても変態さんだということになる。あれ?これ、私が変態かどうかなんて関係なくない?実際千空が変態だから、私がそう思わされているだけで。そうだそうだ。結局は千空が変態なんだ。自分の中で無理やり自己完結させて、洗面所を出る。千空はもう既に盛り付けから何まで済ませてリビングで待っていた。美味しそうな香り。誘われるように足を動かした。その時。
濡れ。
「どうしたナマエ。そんなところで石みてえに固まって」
「・・・トイレ」
「早く行け。いちいち報告いらねえよ」
夢を見るだけで濡れちゃうなんて。私はやっぱり変態なのかもしれない。時期じゃないから分かってたけど、案の定生理じゃなかった。
「いただきます」
手を合わせた。頬杖をつく千空に見守られながら、一口目を口にする。美味しい美味しい。毎度のことながら頬をほころばせると、千空は満足したように自分も朝食に手をつけ始めた。
「千空、いつ帰ってきたの?」
「深夜。気付かなかったか?ま、そりゃそうか」
意味深に笑う千空。ここで私はあることを思い出し、千空の「あれを夢だと言い張るんなら、帰りごときには気付かねえよな」とかいう呟きは聞こえていなかった。
二口目をぱくっと頬張ったところで、私は思い出したようにテレビをつけた。朝のワイドショーはどのチャンネルだったかな。いつもは気が向いた時にしか見ないけれど、今日はゲストに知り合いのメンタリストが出るらしいということを、今になるまで忘れていた。
ようやくチャンネルを見つけると、彼は既にスタジオに登場した後だった。あらら、一足遅かったみたい。今度会った時に怒られちゃうかな・・・まあ見逃すよりはマシだろう。彼の流暢な喋り口調に、千空も吊られるようにテレビに顔を向ける。ふと、食事中だというのに突然こんなことを言い出した。
「今日の夜、続きやるか」
夢じゃなかったのかよ。
「ほんと信じらんない。ほんとにやだ。やっぱり私が言った通りじゃん。千空は変態だ」
「俺が変態?俺にはなんのことかサッパリだが、言うてテメーも遜色ねえだろ」
「なっ!千空、まさか私が変態だって言いたいの?」
「違うのか?なんだよ、テメー普段からあんなに・・・なあ?」
「な、なにそれ、知らない!なんの話してるの!千空のばか!私の知らない私を語らないで!」
「くっくっく・・・ナマエ、テメー相変わらずいじりがいがあるわ」
手で顔を隠しながら、けれども笑うのは隠そうとしない千空。私はものすごく不快な気持ちになった。
「いいもん。私、今日の夜はゲンくんのところに行くから」
「やめとけ。アイツこれから海外にロケだってよ」
「そうなの?じゃあ右京くんになぐさめてもらう。龍くんはもはや海に住んでるからすぐには会えなさそうだし」
「右京も今頃太平洋のど真ん中だ」
「ま、そうだよね〜。じゃあクロムくんやコハクちゃんたち誘ってお話する」
「奴ら、揃いに揃ってキャンプとか言ってたっけな。ルリやスイカも一緒だ」
「私も誘ってくれたらよかったのに。たしか、今日司さんは未来ちゃんとお出かけだから・・・氷月さん暇かな?」
「死にたいのか?」
「たくない。じゃあ大樹くんと・・・」
「大樹はダメだ!大樹は今日、杠をデートに誘う!」
みんな、予定があるって素晴らしいな。
「ぐすん。私は独り寂しく過ごさなきゃいけない運命なんだ」
「奇遇だな。今日は俺も一人なんだよ」
「・・・」
千空は自分の顔に親指を向けて、澄んだ顔でじいっと私のことを見つめてきた。なんかやだ。すごくやだ。純粋無垢な青少年の顔をしないでほしい。でも、なんだかもうどうでも良くなってきた。朝ごはんの途中だし。
「・・・可哀想だから一緒にいてあげる」
「ククク、夜、楽しみにしてるわ」
ほら!もう、すぐそうやって。千空のそういうところがいやだ。でも、何もかも直球なところが千空らしい。