おまけ。キャラ崩壊・センシティブ注意。
現実を見たくない方はブラウザバック。
これを読んでしまったら、この話におけるスタンのイメージがガラッと変わります。むしろ二度美味しい。
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目が覚めてから三日後。ゼノ主導となり拠点に決めた場所から、数十ヤード川を下ったところに天使の石像を見つけた。
分っかりにくい場所だった。入り組んだように生えた木の中央に座り込んで、祈るように両手を握る彼女。周囲には朝日が差し込んで、肩に小鳥まで乗せて。まさにお手本のような格好で俺の前に現れたもんだから、安心する以上に笑いまで込み上げてきた。こっちはアンタの安否を気にしてろくに眠れなかったってのに。
「た、隊長・・・その人は?」
頭に巻きついた植物のツタや葉っぱを綺麗に取り払い、かちかちの脳天をぺたぺた叩いていたら、その時一緒に行動していた部下に目を丸くされた。
まだ野宿で寝るにも安心できない時期だ。ゼノたちの就寝を見張る合間、もちろん周囲への警戒は怠らずに暇を持て余して花冠を作っていたら、また部下に見られて驚かれた。驚くことねぇじゃん、だって天使には輪っかが付きもんだろ。
「・・・・・・隊長がカワイイの作ってる」
その後、待ちくたびれるほど寝坊してきたあいつは、丹精込めて作った飾りをしっかり頭にかぶって俺たちの前に現れた。
もう可愛いでしかない。鬱蒼とした森の中で、ようやく石じゃない生きた人間を見つけたことに安心したのか、涙で顔をいっぱいにして・・・精一杯笑っていた。
俺は周囲の目も気にせず、衛生面も気にせず、作業の手を止めてまで彼女に近づいて何千年分のキスをした。部下にしてみりゃその時が一番釘付けだったろうな。
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正直なんで今まで隠し通せてこれたんだ。と思うくらい彼女には何も話していなかった。だって聞かれなかったから。でも突然聞かれた。ふざけんなと思った。違う、彼女に対してではなく彼女にそう言わせた話の流れに対して言ってんだ。何の話か?聞くな、察しろ。
可愛い顔をして尋ねられたから渋々答えたが、割とぼかした。幻滅覚悟でぶっちゃけると、俺の遊びようは半端なかったね。例えばゼノに引かれるくらいだ。荒れてたんだよ。だってめちゃくちゃ好きなやつが何をしても振り向いてくれなかったんだから、それどころかいつの間にかアメリカからいなくなってた。
そりゃ無理じゃん。自分保てるわけねぇ。
誘いは耐えなかったから自分から行動するまでもなかった。危ないと思ったら速攻切ってたからトラブルは少なかった。・・・のかは分からねぇけど、死にはしなかったな。マシなのを選んだつもりだが、俺が原因で煙草どころかヤク始める女とかいた。今となっては過去の自分に感心するしかねぇ、そりゃ成人したばっかの体力って底知れねぇよな。
そんなクズの代表みたいな生活を送っていたから、あの日久しぶりに彼女の姿を見た時、俺はマジで死んだかと思った。色んな意味でだ。愛しい彼女にまた会えた喜びと、愛しい彼女が数年前より一層美人になっていた喜びと。それから・・・それまで己自身がやらかした最低な不貞の数々を消し去りたい病に陥って、死んだ。
まだある。こういう話は全部まとめて墓場まで持ってく覚悟があるが・・・まだあるんだ。どうしても消し去りたい過去が。まあどれもこれも同じような話だが。聞きたくなきゃまだ間に合うから耳を塞げ。もう一度言う、幻滅覚悟でぶっちゃけると、俺は成人するどころかハイスクールの時には既に・・・ああ、ダメだ、これ以上はとても言えねぇ、これ以降は察しろ。
・・・ったくしゃあねぇな、察しの悪いやつのために言うと、つまり彼女への気持ちを紛らわすために遊ぶようになったのは、なにもハイスクールを卒業してからのことではないということだ。よし、この話題はこれ以降ノーコメントとしよう。
もう言わなくても分かんだろ。だから、あの日、彼女と地元で再会した日。俺が久々の休日に一体どこに行こうとしていたのかというと、ああ説明がめんどくせぇ勝手に分かっとけ。回想いく。
「・・・・・・は、」
俺がまさに今入ろうとしていた地下鉄の出口から、天使が現れた。ちょうど雨上がりで雲の間から陽が差していたのをハッキリ覚えている。言ってる意味わかるか?だから、天使の梯子の真下に本物の天使がいたんだよ。すれ違った彼女の存在感といえば並の人間のそれではなかった。俺だけではなく周囲の人間の目も引いていた。泣いていたからだ。
彼女は涙を流していた。
俺に気づかずに素通りする彼女を振り返ることコンマ零秒、俺の手は無意識に携帯電話を掴んでいた。無意識にこれから会う予定だった相手にコールしていて、甘ったるい声で俺からの電話に喜びの声をあげているのも無視し、「今日行けねぇ」とだけ言い捨ててぶっちした。ドタキャンした。どうせすぐ折り返してくるだろうから即座に電源を切った。
いや、連絡するだけマシじゃん?そして俺は彼女を急いで追いかけた。
「・・・・・・スタン?」
その声だけで、あの頃の俺の純粋な恋心がフラッシュバックした。あ、俺まだこいつのこと好きなんだ。
俺ナマエのこと好きだ。
とりあえず通りを一つまたいで、手頃な価格帯のカフェに入った。雨宿りをしていた客がはけたおかげで、中はチラホラと何人か座っているだけ。ちなみに分煙されていた。これで最悪の場合、彼女に逃げられたとしても速攻で喫煙席に逃げ込むことが出来る。
彼女がいるのでまずは禁煙席に座って、適当なドリンクを二つ頼んだ。好き嫌いは把握している。ハッこんなんでマウント取ろうとする情けねぇ男だ、俺は。誰に対してか?そりゃ・・・彼女が向こうで仲良くしていたかもしれない男に対してだ。
「私、ぜんぶぜんぶ諦めたの。目指す世界がまるで遠かった。挫折したの。もうたぶん立ち直れない」
平静を取り繕って彼女の話を聞いていた。やけに頭が冴えていて、最低限のラインを越す慰め方ができたように思う。自分って本当に不器用に器用なやつだよ。
彼女の涙が完全に収まる頃には悩み相談も佳境を迎え、日常の話に突入した。そんな時だ。苛立っていたわけではなく、単純に口寂しくて無意識に二本の指で口元を押さえていたら、彼女がすぐに気がついた。
「もしかして、煙草吸いたいの?」
「ああ、・・・よく気づいたね」
「だってふわっと煙草の匂いする」
そりゃそうか。言われるまでもねぇわ、んなこと自分じゃ気にしねぇ。
「家族も何人か吸ってるしね。私、ここで待ってるから行ってきてもいいよ」
「でもアンタ目ェ離したらまた泣きそう」
つーか目ェ離した隙にいなくなってそう。それだけは勘弁だ。もう逃がしたくない。だから彼女を煙まみれにしてやった。当然きちんと了承を待ってから、喫煙席に移動した。初めての煙にむせる彼女。いや可愛いが。
その後連絡先を交換して、なんとか約束を取り付けてデートした日・・・当たり前のように箱を持っていたから驚いた。しかも俺と同じ銘柄を。クソ、こんな些細なことで興奮する。
天使が肺を汚してんだ。俺の言葉一つで。ま、結局すぐ楽器をちゃんとやり直したいとかで禁煙始めたけど。だがそんなことは今はいい。忘れもしない、彼女が一本目の煙草に慣れかけた頃に交わしたあの会話。その時にはもう以前と同じ屈託のない笑顔を取り戻していた。
「スタン、いつから煙草してたの?すっごいお似合い。映画とかに出てきそう」
「んだそれ。・・・割と昔だよ。ハイスクールん時も隠れてこそこそ吸ってたな」
「へぇー・・・まあ、そんな貫禄してる」
「アンタこそ、んな澄んだ顔して悪いことには無頓着だよな。昔っから」
アメリカじゃ未成年喫煙って割と一大事だぜ。ま、他の国のことはよく知らないが。言うまでもなく酒も飲んでた。ゼノは銃の製造でギリアウト食らったが、俺こそ他人事じゃなかった。あとゼノの軍資金のためにギャンブルでクソほど金稼いでたし。銃使ったりしてさ。あれ、俺って普通にやべぇやつじゃん。
でもやっぱり彼女は期待を裏切らない。アンタは一体俺の何を見ているんだって聞きたいくらい、真逆の俺をその頭の中に作り上げていた。
「でもスタン、軍人さんでしょ?毎日毎日汗流して頑張ってるんでしょ?すごいよ、そんなの尊敬する!」
あの言葉はミサイルよりも威力があった。
「ほら、スタンって女の子に優しそうな感じするし・・・将来はいいお父さんになるんじゃない?」
誰か俺を殺してくれ。
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さすがの俺でも避妊はした。とある思想以外は全部真っ当で人間のできた男ゼノがたまたま近くにいたから、一線を超えることはなかった。うるせぇ正直に言えばいんだろ、ゴムを忘れたこともあったさ!わざとしなかったこともあった。だが運良く誰も孕ませることはなかった。マジでありがとう。それだけが救いだ。
あと、ここまで来たら戯言にしか聞こえないだろうが、それでもこれだけは言わせてくれ。酒を飲みながらヤることもそりゃ何度もあったが、記憶力には自信がある。俺は今まで一度たりとも中に出したことはない。絶対だ。何があっても絶対だ。
言うまでもないが!彼女と再会したその瞬間から俺は一切女と寝てねぇから!元々それ用だった携帯電話は、二つに折るタイプじゃなかったが文字通り真っ二つにへし折って、不純な気持ちと一緒にゴミ処理場で燃やした。
これで連絡は取れない。中には探偵とか使って俺のことをストーカーしてきたやつもいるにはいたが、近寄ってきた人間は全て鳩尾貫通コースだ。女だろうと容赦はしなかった(捕まらない程度にだ)。
そもそも軍にいるから外出できる回数なんてたかが知れてるし。休日は全て彼女とのデートを取り付けた。悪い言い方するが、半ば自暴自棄になっていた彼女は、ハイスクール時代の拒絶からは想像も出来ないほど面白いくらい誘いに乗ってくれた。単純に嬉しかった。バカみてぇに喜んださ。
必ず彼女がフリーな日を狙って休日申請した。若い頃はそりゃ希望が外れたことも多かったが、昇進するにつれそんな心配はなくなった。てか俺は彼女とのデートのためだけに昇進を目指していたし、そして実際割と偉い立場にまで昇進した。
なかなかねぇぜ?特殊部隊の隊長なんて。何やってんだ自分。
「ねぇ、ナマエ」
「なーに?」
「・・・・・・」
「スタン?」
何度目かのデートのあと。俺はこれまでの軽さが嘘みてぇに・・・まさに生きるか死ぬか、デッドオアアライブ、ド緊張の中初めて彼女を夜に誘った。ちゃんと誠意を持って、優しいキスをして。
彼女は恥じらいながら「イエス」と応えてくれた。その顔だけで飯が食えた。しかし本当に生きるか死ぬかを迫られたのはその後だった。
嬉々としながらホテルに入ったが、その後だ・・・俺は今自分が天国にいるのか地獄にいるのかガチの方で分からなくなった。
「わ、わたし分かんない・・・その・・・なにすれば、いいの・・・?」
彼女は綺麗だった。どっちの意味でも。
脳内に雷が落ちた。うわっこいつ・・・どこまで天使追及すりゃ気が済むんよ!この顔をこれから俺が・・・?っざけんな、んなのめちゃくちゃ興奮すんに決まってんじゃねえか・・・。なにすればいいのか?ナニをするんだよ!!
心の中で勝手に盛り上がる俺。を、見上げる彼女。不安と羞恥心を隠すかのようなあどけない笑顔を見た瞬間に、それまで完璧に蓋をしていたクソデカ罪悪感が湯水のように湧き出てきた。誰か俺を殺してくれ。この世で最も残酷な方法で殺してくれ。
何やってんよ俺・・・この天使のためなら守り抜けたわ・・・マジで・・・。クソ、自分クソ。死ねファック。
でも彼女を俺の好きなように開発していく過程はマジで楽しい。言い出したら止まらねぇから具体的には言わないでおく。とりま何が言いてぇかというと、まだ彼女は発展途上なので死ねない。
あとから考えたら、何故若い頃の俺は彼女の後を追いかけなかったのか?と後悔に後悔を重ねてしまうが、当時の俺は挨拶もなくアメリカを出て行かれたショックでもうまともな判断などできるわけがなかった。そりゃあ居場所は分かってるんだから、ヨーロッパまで飛んでくのは選択肢の一つとしてあったが。
本人からの連絡がなかったこと、ただそれだけで今までなんとか保ってきた彼女への想いがバラバラに崩壊していった。
行っても引かれるだけじゃんね。そしておそらく、本当に行っていたら本当に引かれていた。彼女は音大を出るギリギリまで粘っていたらしいから。ただでさえ余裕のない時に浮ついた顔して会いに行ったりなどしたら、速攻でディスライク叩きつけられてお終いだ。
この判断だけは正しかった。これだけはゼノにも『なんとも言えない』と言われていたから、自分の頭だけで最適な行動を取れたことを誇りに思う。それ以外は全て最悪だ、でもそんなの今更だろ。だってゼノが言葉を濁したこの話題以外は全て『やめておけ』と断言されていたのに、実行した俺はクズ中のクズだ。
笑え。
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俺は俺の知らない四年間を根掘り葉掘りしつこいくらい聞いたってのに、彼女は過去の話は全く興味がなかったのか、俺については何も聞かないでくれた。いや聞けよと思ったが、本当にマジで聞いてくれないでよかった。マトモな答えを持ち合わせていなかったから。
彼女は俺を愛してくれた。
幸せを噛み締めていたそんな時、世界が滅びた。一緒に過去の記憶も滅びればよかったのに。何千年と経てば過去の悪事などもうなかったことのように勘違いさせられていたが、それは俺の思い違いだった。
「私、スタンのことが嫌いになっちゃったかも」
初めてそんなことを言われた。ミサイルと魚雷と他の色々な兵器が同時に心を爆破したような衝撃。何も心当たりがなかった。
嘘だ。心当たりしかない。
彼女から嫌いという言葉が出てきた時、俺の頭の中では次々に過去の記憶が蘇っていた。今日になるまで隠し通して来たってのに、まさか気づかれた?過去の不貞に気づかれた?どこから漏れた?ゼノか?いやあいつは喋らないと言ったら何があっても喋らない。だとしたら俺が・・・気づかないうちに自分で?
「だから、スタンが好きだから・・・嫌いなの。分かった?」
が、彼女の説明を聞いた時、それは全くの見当違いだということを知る。あまりの清らかさに思わず笑うしかなかった。言葉が足りなさ過ぎるのなんて一瞬でどうでも良くなった。
彼女はヤバい、彼女は本物だ。本物の天使だ。可愛いのは大前提として、もはやその次元じゃない。真っ白すぎてヤバい。俺の隣にいていい存在じゃない。むしろそれが理由で勃った。天使がきったねぇ俺をしごいてる顔、めちゃくちゃ興奮する。
その興奮が尾ひれを引いて、ちょっかいを出したくなった。俺が言われたのと同じことを、彼女に言い返してみたのだ。笑いながら「冗談やめてよバカ」と頬をつねられるかもな、と予想していた自分はあまりにも思慮が浅すぎた。
別に真剣な顔して嫌味ったらしく言ったわけじゃねぇのに。あの言葉をまさかそのまま鵜呑みにするとは思わなかった。彼女は元々明るい性格だ、泣くのなんて数える程しかない。今パッと思いつくのは、大事な楽器が盗まれた時と、地元で数年ぶりに再会した時と、石化後に数千年ぶりに再会した時くらいだ。あと初セの時。忘れるわけねぇあの顔。
そんな彼女をたった一言だけで泣かせてしまった。・・・はあ。マリアナ海溝より深いため息が出てくるね。育ちがいい人間ほど後から悪事に手を染めやすいとかいうアレか?あの真っ白な天使ちゃんは、俺という真っ黒な悪魔に惑わされて、まんまと嵌っちまったの。
んだそれ、可愛いかよ。
天使の息は俺と同じ煙に侵された。ゼノが言うには毒ガスのそれが、愛らしい声で俺の名前を呼ぶのと一緒に吐き出されるその度に、俺はどうしようもない独占欲に駆られていちいち口を塞ぎたくなる。
あれは俺の息だ。彼女の息は俺のためだけにある。もしそれが赤の他人かはたまた神にでも奪われようものなら、そいつらの息の根を止めてやる。んでクズの俺も死んでハッピーエンドだ。
・・・たとえそれが俺の大切な幼なじみでもな。心臓に穴開けるだけじゃ足りねぇ。えなに、知りてぇの?言ってもいいけど伏字が追いつかねぇからやめとく。