西の空は火事が起きているみたいにまっ赤にやけていた。
公園の地面は大きなキャンバス。木の枝は絵筆。わたしたちはふたり、地面にひざをついて絵をかいていた。
大きく大きく腕をあっちこっちにいどうさせて絵を描くのはわたし。いっしょにあそんでいるあの子はそのとなりで背中を丸めて小さくなにかをかいている。
「今日ね、学校で図工があったの」
わたしがそう言うと、となりにいるあの子が顔を上げた。
「学校?」
その子はそう、小さく呟いた。それから、
「学校って、楽しい?」
と、小さな声で尋ねた。その声が、顔が、表情が、なんだかとてもうらやましそうだったから、わたしはなんだか「楽しいよ」なんて言えなくなってしまった。
「……べつに。ぜんぜん楽しくないよ、あんなとこ」
「そっか」
「うん。べんきょうしないといけないし、先生はすぐおこるし、みんなうるさいし」
頭の中をぐるぐる回して、ゆびおり数えて、やなところを口に出す。けどどんなに学校のわるくちを言っても、その子の顔は晴れない。
わたしもあの子も、止まった木の枝の先からあたらしい線が生まれなくなってしまっていた。
……学校のはなしなんか、するんじゃなかった。
わたしが口をとじたらあの子もなにも言わなくなってしまって、ただでさえ人のいないしずかな公園がさっきよりもしずかになってしまった。
「……学校、行ってみたかったな」
そんなふうにあの子が言うから。
「わたしも、×××くんといっしょの学校に行きたかったな」
そんなもしもを空想してみる。
きみはその小さいせなかにランドセルをしょって、わたしといっしょに学校へ行く。そしてべんきょうして、ごはんをたべて、クラスのみんなとあそぶ。そうやって夕ぐれだけじゃなくて、朝日も昼間の太陽もきみといっしょに見るんだ。
「きっと、すごくたのしいとおもうよ」
風がふいて、あの子のながいまえがみがゆらゆらと揺れた。それに合わせてあの子のおでこに落ちたかげもゆらゆらと揺れる。その子は顔を上げて、わたしを見ていた。夕日の中、その目は光をうけてきらきらとかがやいていた。それがとてもきれいで、ずっと見ていたいと思ったんだ。
「名前ちゃん、あのね」
「うん」
「いっしょの学校に行くことはできないと思う」
「……うん」
「けど、これからもずっといっしょにあそんでたい」
「……うん、わたしも」
小指をそっとさしだせば、その子はふしぎそうな顔をして首をかしげた。なにをするためのゆびさきなのか、知らないらしかった。
「×××くんも小指を出して」
「……こう?」
真似するように向けられた小指に、自分の小指をからめた。
「やくそくをする時はこうするんだよ」
「……やくそく」
つながった小指のまま、上下にゆらす。
「これからもずっと、いっしょにあそんでいようね」
わたしがそう言ったら、その子は、×××くんは、やっぱりいつもの下手くそな笑顔でうれしそうにわらってくれた。