世界の端っこに到達した話



 “それ”は突然現れた。鬱蒼とした森を抜け、急に視界が開けたと思った矢先の出来事。

「う、そ……」

 眼下に広がるのは、この世界に飛ばされて以来、ずっと恋い焦がれてきた街・東京。ところどころに点在するビルの集落、かと思えばその隣には広大な緑が広がっている。東京タワーもスカイツリーもそこにはあった。
 抜けるように青く、どこまでも広がる空。それはツイステッド・ワンダーランドのものと変わらないのに、その下に広がっている世界はこの世界のものとは違う。
 嗚呼、これは。これこそが。
 まさか、こんなすぐそばにあったなんて。
 ジェイド先輩と入った山の向こうに元の世界があったなんて。どうして今まで気づかなかったんだろう。こんなにも近くに、きっかけはあったんだ。
 言葉にならない興奮を伝えたくて、隣に立つジェイド先輩を見上げる。左右で色の違うその双眸は私に向けられていて、ジェイド先輩は私を捉えるとにこりと笑った。

「ここは、ツイステッド・ワンダーランドの端と言われている場所です」

 にこやかに、いつも通りに、ジェイド先輩は続ける。

「この崖の先に見えている海は逆側の端で、魔力のある者しかワープできないと言われているんです」

 ツイステッド・ワンダーランドの端? 海? ワープ?
 ゆっくりと視線の先をジェイド先輩から崖の先へと移す。そこにはまだ、東京が見えている。瞬きをして、もう一度。やっぱり、東京。目をこすって、もう一度。頬をつねってもう一度。首を振ってもう一度。
 そこにはやっぱり、私の世界が広がっている。
 見間違いじゃない。きっと幻覚でもない。
 私に見えているのは、海じゃない。

「ジェイド先輩、」

 恐る恐る先輩を見上げる。

「はい、なんでしょう」
「先輩と一緒なら、私もワープできるんでしょうか」
「さあ、それはやってみないとなんとも……」

 試しに、やってみましょうか。
 その言葉に、こくんと一度、頷いた。

 ここはツイステッド・ワンダーランド。目の前に広がる世界が違っていても、私はもう驚かない。
 ジェイド先輩の手を取り、崖から一歩、踏み出した。
 最後にもう一度、先輩の姿を目に焼き付ける。

 ああ、願わくば。目覚めた時に、貴方が隣にいませんように。