背後から名前を呼ばれ振り返ると息を切らして駆けてくる姿が気の早い桜吹雪の中に見えた。
今年は例年より開花が早いらしく、卒業式の今日には5部咲きの桜並木で記念撮影となった。
「ンダヨ、黒田。お礼参りかヨ。」
卒業したからァ福ちゃんに止められてたのも解禁だしな、貰ったばかりの黒い筒で挑発するように肩を叩いてみせると、
違いますよ、と焦ったような悲鳴を上げる。
制服を正し、黒田が深々と頭を下げる。
「荒北さん、卒業おめでとうございます。お世話になりましたっ」
ぎょっとする荒北に構わず、頭が膝につきそうになるぐらい頭を垂れる。
「バッ、ヤメロ。恥ずかしいことスンナ」
周りの好奇心の目に晒され慌てる荒北に気にすることなく、黒田は顔をあげるとぐいっと顔を近づける。
「荒北さんっ」
「ンダヨ・・・」
「一生のお願いです。ローレライとツーショット写真撮らせて下さいっ」
「ハァ?!」
突拍子もない一生のお願いに目を剥く。
「フザケンナ、誰がテメーと。撮らせるかよ」
「お願いです、荒北さん、減るものじゃないですから・・・」
「ウルセー!減るんだよ!」
「一緒に、隣に写るだけで・・・触るとかそんなことしませんからっ」
「てか、黒田それ以上言ってみろ、お礼参り喰らわすぞ、コラァ」
やんねーよ!バッカ!最後の最後まで迷惑かけやがって。
アレは、オレんだしィ、うっかり滑らした言葉に荒北も黒田も気づいていない。
すがる黒田の悲鳴に荒北の怒号が被さって青空に溶けていった。
アリスちゃん、ありがとう!
azulverde