教室までの道のりを、二人並んで歩く。
特に、会話もなく無言だが、不思議と気まずくはない。
真緒にとって荒北は既に、怖い人ではなく、むしろお友達に変化していた。


「なァ、いーんちょーサァン」
沈黙を破って、荒北が声をかける。案外、真緒よりも、荒北の方が沈黙を気にしていたのかもしれない。
「え?何?荒北くん」
「……名前ェ」
「なまえ……?」
一瞬、真緒は何のことかわからず戸惑うが、すぐに、はっとして自分を指差す。少し躊躇いがちに。
「そだよ!おめー以外いねぇだろ、バァカ」
「そうでしたね……」
怖くはないものの、荒北の口の悪さにはまだ慣れず、一瞬落ち込むが、すぐに笑顔で切り返した。
「今さらだけど、私、伊東真緒です。よろしくね」
「あァ、まー、よろしくネ。伊東チャン」
まっすぐ目を見て話す真緒に対して、荒北は居心地悪そうに視線を反らす。
そっぽを向いた荒北の顔が少し赤かったことなんて、真緒は知る由もなかった。




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