※某バンドの曲をイメージしてます



「あーくっそ寒ぃ……」
「本当に最近、日が短くなったよね」

いつもの帰り道。
かじかむ両手をこすり合わせる真緒の姿をちらっと横目で見れば、一瞬頭を過る違和感に、思わず片方の眉をぴくりと動かした。

「手袋ねぇの?」
「えっ?うん……今日忘れちゃって」

気がついたと同時に、声に出してしまっていたオレの言葉に、真緒がぱっとこちらを向いて、少し困ったような顔で笑う。
いつも学校の行き帰りにはめていた赤いチェックの手袋が今日は見当たらない。
なんでそれに気づいたかって言えば、いっつも手を繋いで歩くときに、邪魔くせェとか思ってたからだなんて、口が裂けても言いたくない。

「ううっ……今日、本当に寒いね」

容赦なく吹きつける一陣の木枯らしに、身を竦めながら、真緒が両手にはぁ、と息を吹きかけた。白くなった吐息が冷たい空気に消えていく。

「手」
「え?」
「だから、手ェ貸せ」
「……!」

何のことかわからずに呆ける真緒を後目に、真緒の冷えきった左手を掴んで、自分の右ポケットにそのまま無造作に突っ込んだ。氷みたいに冷たい手が少しづつ、オレの手の温度と溶けて混ざり合う。
そのまま、黙って二人並んで落ち葉の絨毯の上を歩く。落ち葉を踏みつける、シャリ、シャリ、という音だけが耳に響いた。

「荒北くん」
「あァ?」
「私ね、今日寒くて本当に良かったな、って思ってる」
「バァカ」

えへへ、と心底嬉しそうに笑う真緒をチラリと見ながら、何食わぬ顔で繋いだ手に力を込めた。
オレも同じこと思ってるヨ、なんて口が避けても言ってやらねぇけど。





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