※荒北×主人公←新開
※ハコガク卒業後、大学設定




「もー靖友のやつ、ほんと信じらんない!」
お皿の端っこに可愛らしく転がっているミニトマトにフォークを無惨に突き立てながら、なまえが頬を膨らます。少し顔が赤いのは酔っているせいかもしれない。そんななまえを後目に、傍らにある空っぽのグラスに新開は黙ってワインを注いだ。
「だって、これで3度目だよ?デートドタキャンされたの」
「へぇ……」
「しかも理由が、疲れてるからって!本当、ムカつく」
って隼人聞いてる、となまえが上目遣いに睨む。内心、怒った顔も可愛い、なんて思ってることはおくびにも出さないで、新開は静かに相槌をうった。
「靖友はさぁ、もう私のことなんて好きじゃないんだよ、本当は」
テーブルに突っ伏しながら、一転して元気のない声でなまえが独り言みたいに小さく呟く。いつの間にか、さっき新開が満たしたグラスは空になっていた。
「もう……本当にバカみたい」
か細く今にも消え入りそうな涙声が、新開には助けて、と言っているように聞こえる。震える肩に触れようと手を伸ばしたものの、どうしても触れることができない。他の女の子の肩を抱くことなんて容易いのにな、と心の中で新開は自嘲した。
「私たち、もうダメなのかな……」
ぽつり、となまえが呟く。
「なまえ……」
「なーんて、そんなの聞かれても隼人だって困るよねぇ、ごめん」
急に顔を上げたなまえがわざとらしいほど明るく振る舞うのを見て、今度こそと伸ばそうとした手を新開は慌てて引っ込めた。
「本当、いっつも愚痴ってごめんね。でも隼人に話したらなんか少し元気出たかも」
そろそろ帰るね、と小さく笑いながら、なまえがゆっくり立ち上がる。
「遅いから送ってく」
「いいって、近いから大丈夫」
なまえに続いて立ち上がろうとした新開を制して、なまえが玄関に向かう。ほんの一瞬の躊躇いの後、新開はなまえの後を追った。その顔に今までの迷いはない。


「オレじゃだめか……?」

華奢な背中を後ろから包みこみながら、耳元で囁く。一瞬、身じろいだなまえの肩をさらにきつく抱きしめ、肩口に顔を埋めれば甘い匂いがした。
「今……は、ずるいよ隼人」
しばらく、その場に立ち尽くしたままのなまえが、そう小さく呟いたのを新開は聞き逃さなかった。
「なまえの心の隙間に入れてもらえるなら、ずるくたっていいだろ?」
わざと吐息混じりに耳元で囁く。と同時に、コトン、となまえの手に持っていたバッグが床に落ちる音がした。



Twitterにてすみびやきのみわさんより頂いたネタで、荒北と喧嘩した主人公をあすなろ抱きする新開。





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